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元オリンピアンだからこそ言えること


この中で特に、アン王女が選手たちを思うお気持ちが表れているのが次の一節だ。

「これは選手の皆さんのオリンピックです。これまでとは違うものになるでしょう。しかしそれは皆さんにとって重要なことではありません。オリンピックを味わい、そして何よりも楽しんでください」

コロナ禍という特異な状況下で開催されている今回のオリンピック。選手達自身も通常ではあり得ないような制限や義務を課されており、そのストレスや不安は我々の想像を超えているだろう。それでも選手たちは自らの限界を超えようとトレーニングを重ねてきた。

だからこそアン王女は、とにかく「味わい、何より楽しむ」ことをメッセージの中で強調しているのだ。このような言葉を発することができるのは、ご自身がオリンピアンだった経歴に由縁しているだろう。

アン王女は、1976年に開催されたモントリオールオリンピックに英国王室として初めて出場。馬術競技でエリザベス女王の愛馬「グッドウィル号」に乗って闘った。メダルは逃したものの、これが王女とオリンピックとの生涯にわたる絆の始まりとなった。

2012年のオリンピックでは、ロンドン五輪組織委員会のディレクターとして活躍し、招致成功に貢献している。現在は英オリンピック協会(1983年~)と「チームGB」の会長、国際オリンピック委員会の委員(1988年~)を務めている。

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だからこそ、選手らがどのような気持ちでその日に向けて自分を高めてきたのかをよくご存知なのだ。アン王女の言葉・話し方・佇まいから発せられるものは、高貴な方の“ありがたいお言葉”というだけでない、アスリートからアスリートへの真の応援が込められている。

今回のオリンピック開催の云々はさておき、自国の選手が出場すると決まったのであれば、選手の安全を守り、祈りつつ、精一杯応援するのが国およびトップのあり方。この短いメッセージで伝わってくる姿勢に敬意を表したい。

最後まで全力を出し切る選手の姿は、それを見た誰かに大きな影響を与えるだろう。勝敗やメダルの有無だけでは測れない、尊い価値である。アン王女のメッセージからは、選手たちに「人々には何かを乗り越える力がある」ということを世界中に知らせてほしい、という意味も込められているのかもしれない。

文=日野江都子

オリンピック
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