ステーブルコイン「テザー」に詐欺疑惑、米司法省が調査中

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安定した価値を実現するように設計されたステーブルコインの筆頭に挙げられる暗号通貨「テザー」の運営元が、刑事責任を問われる可能性が浮上した。ブルームバーグの7月26日の報道によると米国の司法省は、世界で最も価値のある暗号通貨のひとつで、デジタル通貨のエコシステムの基礎となるテザーを立ち上げた「テザー社」の幹部が、銀行詐欺をはたらいた疑いで調査を進めている。

司法省は、テザー社が暗号通貨に関連する取引を銀行に隠していた疑いについて調査を進めていると、事情に詳しい複数の関係者がブルームバーグに話した。

2014年に設立されたテザーは、安定した価値を維持するために米ドルに結びつけられているが、価値の裏づけを銀行に頼っていることで、一部から批判を浴びている。

今回の調査は、米国の規制当局がステーブルコインへの圧力を強める中で、司法省が長年進めてきたテザー社に対する調査が新たな段階に入ったことを示している。

テザー社はブルームバーグに対し、「当社は、当局への協力と透明性へのコミットメントの一環として、日常的に法執行機関とオープンな対話を行っている」と述べた。

時価総額が620億ドル(約6.8兆円)に及ぶテザーは現在、ビットコインとイーサリアムに次ぐ世界3位の暗号通貨であり、この分野のエコシステムの重要な構成要素となっている。ビットコインの取引に広く利用されるテザーに対する刑事訴訟は、暗号通貨市場全体に大きな影響を与える可能性がある。

ステーブルコインは過去1年間で急速に成長し、米ドルを裏づけにするトークンの時価総額は5月に1000億ドルを突破した。しかし、これらのコインのほとんどが透明性に欠けるため、規制当局は「迅速な対応」と「ルールの策定」に躍起になっている。

テザー社は、取引所のBitfinexとともに、巨額の財務損失を隠蔽していたとして、ニューヨーク州の司法当局に訴訟を起こされ、今年2月に1850万ドルの罰金支払いに合意していた。

編集=上田裕資

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