予算を設定する
筆者の予算戦略は至ってシンプルで、「3つのE」に集約される。そのやり方を説明しよう。毎月の出費のうち、70%は「Essentials(必需品)」、すなわち家賃あるいは住宅ローン返済、光熱費、食費、交通費、請求書の支払い、保険、各種ローンなど、必ず発生する支払いにあてる。
また、15%は「Endgame(今後への備え)」、つまり贅沢な旅行や安定した退職後の生活など、将来やりたいことへの備えに振り向ける。そして残り15%%「Extras(追加出費)」で、娯楽や外食、お取り寄せなどの出費にあてる。
次に、この3つのEそれぞれについて、実際にはいくら支払っているのかを割り出してみる。この場合、請求明細書のチェックから始めるのが、一番手っ取り早い。請求明細書を見ながら、支払った額を3つのEに分けて足し合わせていく。この3つのカテゴリー別に合計額が算出できたら、これを1カ月あたり合計収入の額で割ると、それぞれが収入に占める割合が判明する。
目標に合わせて、予算を調整する
支出を計算してみて、上で挙げた「70%を必需品に、15%を今後の備えに、15%を追加出費に」という割合になっていなかった場合は、それぞれの出費を見直して、考えられる理由を検証してみよう。ひょっとすると、今は通勤で地下鉄に乗ることもないので、交通費がゼロになっているのかもしれない。
この「3つのE」に割り当てられたパーセンテージから外れてもいいのは、多いカテゴリーと少ないカテゴリーの双方にメリットがある場合だけだ。ゆえに、無駄な出費を削りたい部分と、多めにお金を支払ってもいい部分をはっきりさせておこう。現実と向き合うのは、つらいことかもしれない。思ってもいなかった妥協をしなければならない、と気づかされる場合もあるからだ。
予算を作成する時に留意すべきなのは、達成への意欲をかきたてるような、現実的な目標を定めることだ。達成したあかつきには、きっと自分を誇らしく思えるだろう。逆に、現実的とは言いがたい高すぎる目標は、失望を招くものでしかない。そして、1つのマイルストーンを達成できないと、もうダメだ、という気持ちに陥り、家計に関する判断を誤りがちになり、せっかく立てた10年計画をすべて投げ出してしまう。実際にそのような例を、筆者はこの目で見てきたのだ。