コストの増大は夏季五輪に限らない。冬季五輪でも、同様の財務破綻の例が生じてきた。ソチ冬季五輪(2014年)では、会場の多くが予算を超過したことから、費用総額は218億9000万ドル(約2兆4000億円)に上り、289%の予算超過が生じた。
五輪開催の長期的なレガシー(遺産)は、肥大化し放置された会場が多く残されることだけになるケースがこれまで多く、サラエボやアテネ、北京、リオデジャネイロなどがこのケースに当たるが、これはほんの一例に過ぎない。
こうした街の朽ちた競技場や選手村は、選手の功績をたたえる輝かしい記念碑ではなく、悲惨な財務運用ミスの重苦しい象徴となっている。
1992年以降、各国が五輪開催に費やした巨額の費用は次の通り。(かっこ内数字は米ドルで、2018年の平昌冬季五輪と2021年の東京夏季五輪を除き、2015年時点の米ドルで表記)
東京の数値は概算値。出典は日本経済新聞、朝日新聞、フォーブス、プレー・ザ・ゲーム引用のベント・フリュービェア(経済地理学者)他の論文。
東京夏季五輪(2021年、280億ドル/約3兆1000億円)
平昌冬季五輪(2018年、129億ドル/約1兆4000億円)
リオデジャネイロ夏季五輪(2016年、137億ドル/約1兆5000億円)
ソチ冬季五輪(2014年、219億ドル/約2兆4000億円)
ロンドン夏季五輪(2012年、150億ドル/約1兆6500億円)
バンクーバー冬季五輪(2010年、25億ドル/約2800億円)
北京夏季五輪(2008年、68億ドル/約7500億円)
トリノ冬季五輪(2006年、44億ドル/約4900億円)
アテネ夏季五輪(2004年、29億ドル/約3200億円)
ソルトレークシティ冬季五輪(2002年、25億ドル/約2800億円)
シドニー夏季五輪(2000年、50億ドル/約5500億円)
長野冬季五輪(1998年、22億ドル/約2400億円)
アトランタ夏季五輪(1996年、42億ドル/約4650億円)
リレハンメル冬季五輪(1994年、22億ドル/約2400億円)
バルセロナ夏季五輪(1992年、97億ドル/約1兆1000億円)