さらに、DYCLEのモデルには、地域内で取り組んでいるからこその利点がいくつかあるという。地域の利用者同士も顔が見える関係性になることで、共につくる堆肥への意識が変わる。母乳をあげる母親は、自分の体調や食べるものに気を付けるようになるという。
お父さんと息子が果物を収穫している様子
「オーガニックなものを少し増やしたり、ストレスを減らしたり、生活環境を考えていくことにもつながります。たくさんの人たちがオーガニックなものを食べて、地域で生産された新鮮なものを食べることで栄養価の高い排泄物が赤ちゃんから出てきたら、それが生きた土壌を作り、良い土で育った質の良い食材が家族にわたる循環が生まれます。全ての基準を少しずつでも上げると、必然的に関わるすべての人の生活にも良い影響を及ぼすことができる、そういう社会に貢献できたらと思っています」
DYCLEを通して、地域のコミュニティができあがることで、オーガニック食品を普段の食事に少し増やすこと、ストレスを減らすこと、生活環境を見直すことにつながる。それが栄養価の高い排泄物を生み出し、それが地域の土壌づくりに貢献し、そしてその土で育った良い食材が家族に届くという循環が生まれるのだ。
DYCLEをサポートしている方々
自分の子供や家族の健康だけでなく、堆肥から育った食物を食べる人の健康にも貢献しようと、視点が地域コミュニティへと広がり、相互の関係構築にも繋がる取り組みである。
地域に合わせた展開を
1. 簡易版製造機の開発
こうしたDYCLEのモデルは、今後他の地域にも展開していきたいと松坂さんは意気込んでいる。そのためには、おむつを手作りするのではなく、効率的に天然素材のおむつを作れるよう、新しく機械を作っているという。
「実はDYCLEのシステムを取り入れたいとご連絡をいただくことが多いのですが、その約4割が発展途上国からのお問い合わせなのです。おむつに使用できる各国特有の素材は何十種類もあるかもしれませんが、素材があってもおむつを作る機械を買うだけの経済的な余裕がない場合、大がかりな機械を導入することが難しいケースも少なくありません。そこで、身近にある天然素材を使って生産できる方法を提供したいと思い、簡易製造機を開発しています」
2. ラーニングネットワークの創出
今後の展開にあたって、「ラーニングネットワーク」の創出を目指している。導入意欲のある地域・すでに導入している地域・生産はできないが導入したいと考える地域がつながり、情報交換するネットワークだ。
DYCLEの仕組みを導入するためには、利用してくれる人を集めるだけでなく、資金面のサポートや収集場、堆肥化する企業などさまざまな協力が必要となる。従来とは違う、一方通行型ではなく資源の価値を活かした循環型システムの取り組みは1人や1社では完結できない。地域の資産を活用し、その地域のオリジナル製品を創り、使い、再利用し続けることで、無駄のない循環ができあがるのである。