ベルリン発「おむつ」のスタートアップは、循環型地域をどう生み出したのか

DYCLE共同創業者の松坂愛友美さんとChristian Schlohさん


DYCLEの事業を特徴づける、3つのポイント


今回伺ったDYCLEの取り組みについて、サーキュラーエコノミーの視点から整理して考えてみたい。

1. 技術サイクルから生物サイクルへの移行

技術サイクルで製造し、使用後は廃棄するという選択肢しかなくリニア型モデルからの脱却が図れていなかった従来のおむつ。吸収性などの機能性を高めるためにさまざまな化学物質が配合されていたために焼却や埋め立てしか出口がなかったおむつを、DYCLEは天然資源のみを採用し生分解可能にすることで生物サイクルで回せるようにした。生物サイクルを回すことだけでなく、DYCLEでは地域内で原料を調達し、製造、使用、そして堆肥化するといった地域内でループを回すことにも重きを置いている。

2. 土を通じた循環と環境の再生(リジェネレーション)に繋がる取り組み

エレン・マッカーサー財団が提唱するサーキュラーエコノミーの3原則のひとつに、「自然の仕組みを再生する」がある。DYCLEは、まさに「環境の再生」を体現している。

DYCLEは、排泄物を堆肥化することで人も自然の循環プロセスの中に加わることができる仕組みである。さらに、DYCLEは廃棄していたものを資源として循環させるだけでなく、堆肥を土に使い、木を植えることで環境を再生させるといったリジェネラティブな要素も入っている。DYCLEによると、赤ちゃん1人の年間の排泄物から約1トンもの土をつくることができると算出している。そしてそれらは栄養豊富な土であることが特筆すべき点である。

3. つながりの創出

このプロジェクトを実現するためには、地域の住民や団体、行政の連携が欠かせない。DYCLEはおむつを提供するが、おむつの回収は地域の幼稚園などに協力してもらい、堆肥化も地域の企業へ依頼している。これらの連携なくしては出来上がらない仕組みであると同時に、連携するからこその良さがある。

調達、製造、回収、堆肥化など一連の流れを地域で行うことで、堆肥を地域コミュニティに還元し、地域内で木を植えることで環境面への良い影響だけではなく、雇用の創出や地域コミュニティの関係を構築し、地域社会をも支援する輪が出来上がる仕組みになっている。

さらに、地域内に留まらず、同じ仕組みを実践したい他の地域へのノウハウの共有するべく、オープンソースでノウハウを共有している点も特筆すべき点だ。こうした循環型おむつをきっかけに、あらゆる環境に配慮した取り組みが地域間で共有されるといった、グローバルなネットワークへと発展していくのではないだろうか。


この記事は、2021年7月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。

連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
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文=瀧田 桃子

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