ビジネス

2021.08.06

「変わらない」は違う。サッポロのマーケターは看板商品をどう変えたか?

サッポロの看板商品のマーケティングを担当する齋藤愛子(左)と沖井尊子(右)


新しいコンセプトは、「Color Your Time!ビールの楽しさ、もっと多彩に。」と、英語が取り入れられたこともあり、ともすれば高級指向のイメージから一新、カジュアルな印象を受ける。

リブランディングにあたって、消費者はヱビスビールに何を求めるのか、価値観はどう変化していくのかを取りまとめた。

「これまで築き上げてきた『ハレの日に飲む』イメージの敷居の高さからか、顧客調査を行うと『年に数回しか飲まない』方も多くいらっしゃることがわかりました。なかには『部長のビール』だとおっしゃる方も。プレミアムブランドのヱビスビールだからこそ提供できる特別な時間を、日常の中でも楽しんでいただきたいと思い、リブランディングに踏み切りました」(沖井)

沖井尊子の話す様子
ヱビスのマーケティング担当沖井尊子

「本年はタレントではなくプロダクトを中心に、まだ認知の低い多彩なラインナップの存在を周知することをCMの役割にしています。また、その中で『私たちも飲んでもいいんだ』と気付いてもらえるように、CMには若い方も登場していただいています。メインのターゲットは、やはり比較的生活にゆとりがある方ですが、最近は年功序列の文化が変わってきているので、中高年だけでなく、自然と若者も入ってくるでしょう」(沖井)

年齢や性別でカテゴライズしないターゲット像


黒ラベルとヱビスビールで共通しているのは、最初からブランドの若返りを狙っていたわけではなく、消費者とのコミュニケーションを重視した施策から、副次的に生まれた効果だということだ。

黒ラベルとヱビスのホームページ
黒ラベル(左)とヱビス(右)のホームページ。大胆なリブランディングが、共感や売り上げ貢献に寄与することとなった。

「お客様のことを性別や年齢では、区別していません。私たちにとっての理想のお客様は、黒ラベルそのもののように、軸をしっかりと持っていて、自分の意思で選択ができる方。だけど、気張ってなくて、自然体。そういう方であれば、70歳の女性でも、20歳になりたての男性であろうと、それは黒ラベルの理想のお客様という考え方です」(齋藤)

「若者のビール離れや人口の減少は無視できないものではありますが、私たちはメジャー感を追い求め、不特定多数をターゲットにマーケティングする考え方ではありません。高価格のブランドですので私たちはその分の価値を伝え、ヱビスビールの思いとお客様の思いが、どれだけ深いところで繋がれるかを大事にしています」(沖井)

世間はもちろん、社内からの注目度も高い、黒ラベルとヱビスビール。目に見えないブランドイメージや世界観は、構築するのも、方向転換も難しい。

 

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文=井上榛香 写真=西川節子

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