五輪期間中の最高気温は平均で30度程度になるとみられている。東京の猛暑は高い湿度も相まって選手のパフォーマンスを損ない、熱中症や脱水症状、日焼けなどを起こすリスクも高める。すでにビーチバレーの選手からは砂が熱すぎるという苦情が出ている。
主催者側もこの問題を予想していなかったわけではなく、試合時間を変更したり、マラソンや競歩の会場を札幌に移したりする対策をとってはいる。ただ、気候変動によって気温が上昇するなか、暑さ対策はあらゆるスポーツ大会でいちだんと差し迫った課題になっている。
テニスやサッカーの主要大会では、選手を酷暑から守るポリシーを導入しなくてはならなくなっている。米国では今年、トライスロンや競馬の大会が熱波により中止になった。中東のカタールで来年開催されるサッカーのワールドカップ(W杯)では、温度と湿度の調節機能を備えたスタジアムで試合を行う予定だ。
気候変動の影響は猛烈な暑さだけに限らない。冬が短くなってきていることはスノースポーツの存続にかかわる脅威になっているし、2019年のラグビーW杯では台風のため数試合が中止を余儀なくされた。米国やオーストラリアでは、山火事によって屋外の試合がいくどとなく中止や延期に追い込まれている。
国際オリンピック委員会(IOC)はフォーブスの取材に対し、「暑さをめぐる懸念はたいへん真剣に受け止めている」とし、気温が選手に及ぼす影響を軽減するため広範な対策を講じていると説明した。具体的には、陸上や自転車の長距離種目の競技時間を遅らせたことや、馬術やトライスロンの競技時間を早朝に変更したこと、日陰を増やしたり水分補給をとりやすくしたりしたことを挙げた。
Getty Images
日本で2019年6〜9月に熱中症で救急搬送された人は約7万1000人にのぼり、うち118人が死亡している。2020年の同じ時期は新型コロナの影響で外出者が少なかったが、それでも約6万5000人が救急搬送され、うち112人が亡くなっている。
東京都医師会は、7〜8月に五輪を開催するのは新型コロナのパンデミック(世界的大流行)以前から深刻な問題だったと指摘している。