西村康稔経済再生担当相(Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images)
確かに、菅首相は当初、「承知していない」とコメント。17日にはテレビ番組で「結果的に飲食店や酒販売店の皆さまに不安、混乱を生じさせてしまったことを申し訳なく思う」と謝罪したが、「西村を責めるなら俺を責めてくれ」といった気概は見せなかった。ベテラン議員は「才に走る西村の人徳のなさもあるかもしれないが、あれでは誰も総理のために働こう、という気にはならないだろう」と語った。
この話を自衛隊の元将官にしたところ、元将官は「菅さんのやり方は、どちらかと言えば威圧的な統御に似てますね」と語った。自衛隊の人心掌握・組織管理のやり方は、「指揮と統御」そして「管理」だという。「指揮」とは、部隊の任務を達成するために的確な判断を下して命令をすることを意味する。内閣でいえば、間違った政策判断をして国民の生命や財産に無用な負担をかけないようにするという意味だ。「管理」は、マネジメントであり部隊の装備や人事などをきちんと管理して、組織がちゃんと動くようにする。内閣なら、閣僚を適材適所で配置するほか、バランスが取れた人事で不満が出ないようにするということだろう。
そして、「統御」は部隊が指示通りに動くように部下を感化し心服させてコントロールする能力を指す。これは厳しい軍紀や威圧的な態度で軍の規律を守らせるというやり方もある一方、上官が「背中を見せる」とことで部下を納得させるというやり方がある。元将官が「威圧的な統御みたいだ」といったのは、激しい暴力を振るって命令に従わせようとする例を指す。確かに菅首相の場合、「逆らう奴はクビ」という人心掌握術があまりにも有名だ。
しかし、このやり方は、戦後75年以上が経ち、民主主義と平和な世界にどっぷりつかった日本人にはあまり効果がない。元将官によれば、現代の自衛隊が心を砕いているのが「背中を見せる」「部下を大事にする」という行為だ。