土に還る「おむつ」が生み出す、循環型地域コミュニティー

DYCLEのセット

使い捨ておむつをめぐる課題は年々高まってきている。使い捨ての紙おむつは、家庭系可燃ごみ排出量の6〜7%(重量⽐)と推計されている。また、紙おむつは⽔分多く含んでおり発熱量が⼩さいため、ごみ焼却における熱回収効率(発電効率)向上を妨げる要因の⼀つともされている。さまざまな素材を使ってつくられ、使用後はリサイクルも容易ではない紙おむつは自治体や企業を中心に解決の糸口を探っている。

「毎日の生活から生み出されるものから、自分を生かしてくれている地球の役に立ち、新しい価値を産めるシステムがあったらいいなと思っていました」

そう話すのはベルリン発のスタートアップ、DYCLE(ダイクル)共同創業者の松坂愛友美さん。「Diaper(おむつ)」と「Cycle(循環)」を合わせて名付けた「DYCLE」では、生分解性のおむつをサブスクリプションモデルで提供し、乳児の排泄物を堆肥化した土を使って木を植えるという循環を生み出している。

今回は松坂さんになぜおむつに着目したのか、そしてどのようにしてDYCLEは循環する仕組みになっているのかを伺った。

循環するおむつのシステム


DYCLEは、おむつ自体を循環させるために、画期的な変革を起こした。DYCLEがどんな仕組みで循環をつくりだしているのかを紹介したい。

まずDYCLEのおむつは、地域の工場で出た麻の副産物を吸収剤の原料に使用している。100%堆肥化できるよう、従来のおむつが使用している化学製品は一切使用していない。DYCLEではおむつの中敷きを作っており、その中敷きを支えるおむつカバーとセットで使用する仕組みになっている。

その生分解性のおむつは使用後に、毎月同封される炭の粉を少量混ぜてバケツに入れるだけ。混ぜた炭の粉は微生物が含まれており、堆肥化する際の分解を促すという。そして1週間ほどでバケツが満杯になれば、地域の協力先である保育園やファミリーセンターへ家から持参する。

DYCLE
回収されたおむつ

次に、地域の施設でおむつを集めたら、人糞堆肥を作る資格があるコンポスト会社へ運び、およそ1年ほどで上質な堆肥へと生まれ変わる。その堆肥は、DYCLEを使用した親またはおむつの収集に協力している施設や団体に提供したり、今後は有機農家や苗床を育てる会社へ販売したりすることで、果物などの木を植える際に使われる。

そして数年後にその堆肥から育った木の実からジャムなどの食品を作り、販売することで地域のビジネスが育つのである。このようにおむつからアウトプットが生まれ雇用や売上創出につながる。結果、地域も好循環していく仕組みができあがる。

生分解性おむつ
果物の木を植える様子

また、興味深いことにDYCLEを作るプロセス自体も人の循環の輪が作られている。

DYCLEではコアメンバーのほかに過去に累計約50人がプロジェクトに加わったり抜けたりしているそうだ。

「活動をしているなかで、さまざまな夢や想い、スキルを持った人たちが自然と集まってくるので、それぞれの興味関心や得意なことを活かしてもらいながらプロジェクトを進めています」
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文=瀧田 桃子

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