土に還る「おむつ」が生み出す、循環型地域コミュニティー

DYCLEのセット


「きっかけは、プロジェクトとして開催していたワークショップや展示で、おむつの廃棄量に課題意識を持つ親に多く出会ったことから始まりました」

おむつを捨てる量に課題を持つ親がこんなにもいるのであれば、おむつごと堆肥化して安全な土を作りたいと思い至ったのだという。

「おむつは言わば、土を作る原料である排泄物を収めるためのパッケージです。そこで『循環するおむつ』というコンセプトで、ごみとして燃やしていたものを地球に還元できる仕組みを作りたいと思い、2015年にチームができあがりました」

そこで立ち上がったDYCLEは、毎月1カ月分のおむつのインレイ(中敷き)と1週間分の排泄物を保管するバケツ、そして炭の粉を家庭に届けるサブスクリプションモデルを提供している。使用後のおむつを堆肥化する仕組みも作り、現在はベルリン市のフリードリヒスハイン=クロイツベルクという地域でそのサイクルを回しながら、日々改善を繰り返している。

紙おむつ
DYCLE共同創業者の松坂さんとChristian Schlohさん

ごみを「減らす」のではなく、ごみから「作る」思考


地域でゼロウェイストを目的とした活動を始める場合、どこから手をつけていいのか困っている人も多いのではないだろうか。「プラスチックなど、ごみを減らす取り組みも大切だと思いますが、『減らす』という意識は我慢大会になってしまいます」そう話す松坂さんは、環境に良い活動を楽しく実践する方法を見いだすことの大切さを語った。

松坂さんは続ける。

「私たちは、ごみを減らす方法を考えるのではなく、価値があるものを『作ろう』と打ち出しています。ごみを減らす努力をするよりも、ごみから新しく作りだせた方がうれしいのではないでしょうか。ベルリン市のこの地区は『ゼロウェイス』を掲げています。まずは生ごみから土を作ってはどうかと提案しました。しかし地区の方からは、成功するかわからないけど、おむつの堆肥化にぜひ挑戦したいという返答をいただきました。前例がなくチャレンジングかもしれないけれど、実現できたらより感動するほうを選びたかったんだと思います」

ファイナンス面や環境のインパクトへの配慮も大切だ。しかし、行政が市民からの理解を得るには、関わる人が感動でき、共に手を動かしながら創造する取り組みも良いのではないかということだ。

「いま私たちがやっているのは微々たるものですが、実際におむつから出来た土を見て『なにを植えようか? 』と一緒に考え、みんなで植えると楽しいですよね」


この記事は、2021年7月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。

連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
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文=瀧田 桃子

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