ワクチン接種の前に。押さえておきたい5つのこと

5月16日、東京都内

新型コロナウイルスワクチンの職域接種が6月21日から本格的に始まった。ワクチン供給の遅れは見られるものの、つい先日にはモデルナ製のワクチンの接種可能年齢が12歳以上に拡大されるなど、接種の加速化への期待は高まってきている。一方で、接種した人の情報も増え、高熱や腕の痛みなど、副作用を不安に感じている人もいるだろう。

ワクチンを接種するにあたって、気を付けるべきことはなんだろうか。医学博士であり、既に2回目の接種を終えた福田千晶が解説する。

※本稿は、医療情報サイト「時事メディカル」の記事「ワクチン接種に当たって心掛けることは?~体調整え、服装にも工夫を~」の転載である


ワクチンとは?


ワクチンというのは、体内に入って病気を起こすウイルスや細菌などの病原体に類似のものを体内に入れることで、実際にその病原体が入ってきたときに体が勝てるように準備をしておく「免疫」を付ける方法です。まさにウイルスや細菌に対する「予行演習」、災害に対する防災訓練のようなものです。

ワクチンの目的は主に4つあります。

1. 感染予防:「感染」を予防する
2. 発症予防:感染しても、症状が出現する「発症」を予防する
3. 重症化予防:もし感染し発症しても「重症化すること」を予防する
4. 集団免疫を獲得する:多くの人が免疫を得ることで、「感染の拡大」を予防する

新型コロナウイルスワクチンに関しては、1の「感染予防」の効果は、この原稿を書いている時点では明確には分からないようです。ですから、コロナワクチンを接種しても、感染してさらに別の人に感染させてしまうことはあり得ます。

2と3の「発症予防」と「重症化予防」は効果があるようです。発症予防に関しては、ファイザー社のワクチンの予防効果は95%と言われています。95%ですから発症予防効果はかなり大きいですが、100%ではありません。もし感染すれば発症する可能性もあるので、油断は禁物です。4の「集団免疫獲得」に関しても、多くの人々が免疫を獲得できれば、大きな効果が期待されます。

種類もいろいろ


いろいろな病原体に対するワクチンには幾つかの種類があります。

「生ワクチン」は、ウイルスや細菌の毒性を弱くして症状が出ないようにしたものを体内に入れて免疫を付けます。しかし、生きた病原体を使うため、ごくまれに、接種によって、その病気を引き起こすリスクがあります。私も、ポリオ生ワクチンが原因でポリオを発症し、脚に障害を有することになった患者さんを診察したことがあります。

「不活化ワクチン」は、培養して増やした病原体に加工をして、病気を起こす力を無くしたものを体内に入れます。インフルエンザワクチンなどは、この不活化ワクチンで、「ウイルスや細菌の死骸のようなものを入れる」という表現をされることがあります。

新型コロナウイルスワクチンは、コロナウイルスの外側にあるトゲトゲした突起(スパイクタンパク質)に似ているものを体内で作るための情報を注入します。その突起に反応する抗体を作ることで、実際にウイルスが体内に入ってきたら打ちのめす(免疫)用意をしておくのです。突起部分を体内で作る設計図のようなものを入れる「mRNAワクチン」と、害がないと考えられるウイルスに設計図の情報を組み込んで注入する「ウイルスベクターワクチン」があります。
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文=福田千晶

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