ビジネス

2021.07.25

共通点が世界への扉を開ける「シンパシーネットワーキング」

イラストレーション=尾黒ケンジ


ここで最初にやったことも、共通点を繋ぐことでした。今回は各界で活躍されている「佐賀県出身者」を集めました。音楽家のZAZEN BOYS向井秀徳さんに始まり、モーショングラフィックデザイナー、プロデューサー、カメラマン……。僕も含めて全員佐賀県出身。このムービー、全員が一度も顔を合わせる場もなく、それぞれが役割を果たし、集まらずに完成しました。でも、思いは完全に1つでした。名刺交換するときにお互いに「佐賀市出身の倉成です」「武雄市出身の小島です」とか言い合うから、もう5秒で打ち解け完了。出身者だから、佐賀についてのリサーチはほぼ不要。故郷をよくしたい熱意は皆同じ。そして結果、大成功でした。当時ニコニコ動画などでは「埼玉じゃできない」「福岡でもやってくれ」など相当うらやましがられました(一回リセットされたので現在の再生回数は減っています)。こうして、同郷という共通点が日本の地方創生動画のはしりをつくったわけです。



この2つの体験から、共通点が生む力を知り、その方法をシンパシーネットワーキングと命名、ノートにメモしたのですが、その後、この連載をお届けしている「電通Bチーム」をつくるときにも、「本業以外の個人的なB面を持っている社員」という共通点でチームを組む流れにつながったのでした。

なかなか人に会えないいまの時代、「共通点」をうまく活用して人をつないでみては?というのが今回の提案。趣味、好きなもの、性格、血液型、元〇〇部……。強いつながり、そして化学反応が、初回から起こることうけ合いです。

と、初稿で書いたら、この連載の担当編集者から質問が。共通点をもつ人を集めるだけでいいんですか? ほかにコツがあるのでは? と。いや、それだけでいいんです。仏教用語で「一人一世界」という言葉がありますが、同じ世界に生きていても、それぞれが見たり住んだりしている世界は違うもの。共通点は、お互いの世界をつなぐ扉を開ける鍵。扉が開いて世界がつながれば、話が弾む。すると、夢や野望や悩みなどさらに話がつながっていく。

A型男女の婚活イベントとか、左利きだけ集まる経営者会議とか、地下組織っぽいほうがそそるとか、狭い共通点のほうが盛り上がりやすいなど。細かい枝葉の工夫はいろいろあるにはありますが、それはあくまでスパイスです。

ちなみに、先日久しぶりに「新コン」をZoomで実施しましたが、やはり共通点は人を強く結んでくれました。リアルでもリモートでも結構。同じであることの力を。いまこそ、お試しあれ。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。


倉成英俊◎2014年から電通Bチームをリード。アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所所長。20年、面白いプロジェクトを作る&手伝う専門会社「Creative Project Base」を創業。世界中のプロジェクトに携わる。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

文=倉成英俊

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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