ビジネス

2021.07.25 12:30

共通点が世界への扉を開ける「シンパシーネットワーキング」

イラストレーション=尾黒ケンジ

血液型、出身地、働く業界……。初対面の人でも「共通項」があればどこか仲良くなりやすい。そんな経験をしたことがある人は少なくないはず。

今回は共通項をもつ者同士を集めることを「シンパシーネットワーキング」と名付け、その場から生み出される可能性を実例と合わせて解説。人に会うことがはばかられるいま、コロナ禍を口実にオンラインでも実践してはいかがだろうか。


人は人と違っていたいと同時に、人と同じであることも求める矛盾した存在です。であるが故に、共通点があるとお互いの距離が縮まりやすい、という特徴が我々人間にはあります。

その原理をコミュニティづくりに応用したものが、今回ご紹介する「シンパシーネットワーキング」。何かを始めたいときに、あらかじめ共通点がある人たちを集めるという方法です。

2011年、新規事業部的な立ち位置の部署に異動した僕は、とある試みを思いつきました。世の中を見渡すと各社に新規事業部がある。新しいことをしなくてはいけないのは同じはず。会いに行ってみたらどうなるか。行ってみよう、と。

ご縁があって、最初に訪れたのはバンダイナムコの新規事業部。行った瞬間に、あ、これは何かが始められるな、と思いました。「同じ新規事業部なのでお会いしたいのですが」と言うことできっかけがつくりやすかっただけでなく「心の鍵」を開けて待ってくださっていた。だから、話が早い。「どんなことやっているんですか?」「うちはこうなんです」「わかるわかる」「もう、組んじゃいましょう!」と。

あと4社にお声がけして計6社、新規事業部だけで集まってまとめて会ってみることにしました。この会合にはタイトルがあった方がいいな。そこでつけたのは「新規領域部署連携コンソーシアム」。参加されていたKADOKAWAの松山加珠子編集長(当時)の案で、のちに略称で「新コン」と呼ばれるようになりました。6社でやったのは、プチプレゼン大会。各社20分でそれぞれがやっていることや抱えている課題を話し始めると、まあ盛り上がること。

その後は、半年に1回「新コン」を開催。徐々に参加企業数も増え、新規事業部でなくとも、企業の新しいことを探索する部署やスタートアップ、NPOなども含めなんと60社にまで膨れ上がりました。すると、組織を超えて自然発生的にさまざまな情報交換が起こり、さらには本当に新事業やプロジェクトが生まれていきました。

僕自身の経験をもうひとつ。図らずも同じ11年、故郷佐賀県からPRムービーの製作を依頼されました。最初、僕は反対したんです。なぜならいまほど「地方創生ムービー」が乱立していない時代であり、かつ自治体がつくる動画はことごとくつまらなかったから。でも担当者の熱い説得に、逆にその第一号になるチャレンジにしようと、取り掛かりました。
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文=倉成英俊

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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