現地感を味わえる中華料理のフードコートが人気。「旅ロス」が後押し

池袋の「友誼食府」。雑居ビルのエレベーターを降りると、現地を思わせるフードコートの世界が広がる


「海外へ旅するのが難しい時代ですが、このページで世界の地元メシを楽しんでみませんか? いつか世界を旅する日のためにも」という呼びかけで始まる同グループのメンバーは、7月18日現在で約2万1000人。毎日、数百人ずつのペースで増えていて、月間の閲覧数は150万PVを超えている。

岡崎さんがこのグループを立ち上げたのは、4月に刊行された同名の新刊書籍の周知も兼ねて、海外で体験した食という話題を通じて多くの人たちと思いを共有しようという理由からだった。岡崎さんが語る。

「海外で自分が体験したことは、誰かに話してみたいと皆思っている。このグループに投稿すると、いろんな人から『いいね!』を押してもらえたり、『自分もその店に行きました』とコメントをもらえたりする。多くの人が、いま旅の思い出を懐かしんでいる。投稿することで自分の記憶が蘇るのは楽しいし、また新たな感動に浸れるようだ」

興味深いのは、立ち上げ4カ月後の5月20日の時点ではわずか1000人ほどだったメンバーが、その後、突然増え出したことだった。「その理由は定かではない」と岡崎さんは言うが、6月に入っていきなり人気が高まったのは、コロナ禍が始まって2回目の夏に突入した時期と重なったからではないかと筆者は推測する。

メンバーの男女比は55%対45%で男性が若干多く、年齢は35歳~45歳がメイン。20代が少ないのは海外経験の少なさにもよるだろうが、フェイスブックの利用者があまりいないからだろう。メンバーが急増し始めた頃からは、30~40代の女性も増えた。さらに、海外在住の投稿者も、全体の1割にも満たないが続々現れたという。

筆者も、自分が詳しい極東ロシアや中国、台湾などのグルメを投稿しているが、特に極東ロシアのコーカサス料理や日本海でとれたシーフード料理といった少々レアな話題に対しても、多くの人たちから「いいね!」をもらい、楽しませてもらっている。

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スープが辛くて痺れる四川料理の酸辣粉(サンラーフン)

先日、3年前に訪ねた香港の老舗飲茶店が移転したというニュースをネットで知り、近況を問う投稿をしたところ、今年5月まで香港に在住していた女性が、店名を変えてリニューアルオープンしたと書き込んでくれた。このグループには、必ずこの種の詳しい事情を知っている人がいるにちがいないと考えて投稿したのだが、まさにそのとおりだった。

中華のフードコートが全国に波及


岡崎さんによれば、このグループでは、高級レストランより路地裏系の店の投稿が人気のようだ。彼の本の書名にもある「地元メシ」というコンセプトが、旅のシーンにつながりやすいのだろう。単に食の話だけでなく、その土地の人々との交流や街の雰囲気まで包み込んだ体験や思い出が好まれているのだと思う。

岡崎さんはこのグループの人気が急上昇した理由を2つ挙げる。

「まず、いまはリアルの場では難しいので、同じ思いや体験をした人たち同士が集うことの喜びがあること。そして、コロナ禍で海外に出かけることができない時代の『旅ロス』を癒し、元気を与えるコミュニティになったからでは」
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文=中村正人 写真=佐藤憲一、山端拓哉

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