「スポーツビジネスという概念はもっと拡大できる」DeNAが描く再構築への道筋

写真提供=横浜DeNAベイスターズ


こうした施策でベイスターズは市民により身近になり、それがこの地で40年以上かけて積み上げてきたものと相まって、公共財として地域に認められる存在になっていった。
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スポーツというソフトインフラで都市開発


スポンサーに支えられたとはいえ、コロナが事業に与えたダメージは大きい。しかし、岡村は「あと1年、あるいは5年足踏みするかもしれないが、必ず復活する」と言い切る。

「スポーツの語源は“気晴らし”。生き延びることだけを考えたら、スポーツは役に立ちません。でも、人間が人間らしく生きるために、またスポーツ文化を必要とするときが必ずやってきます」

ビジョンとして掲げた横浜スポーツタウン構想はどうか。実はDeNAは旧横浜市庁舎街区の再開発プロジェクトに参画している。跡地に建つ高層複合ビルは25年に完成予定で、同社は国内最大級のライブビューイングアリーナを手掛ける予定だ。
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スポーツを軸にしたまちづくりの取り組み「横浜スポーツタウン構想」。球場に隣接する横浜市庁舎跡地の再開発は、DeNAを含む8社共同で手がける。

ここまでいくと、スポーツ興行を超えて都市開発の領域だ。それをスポーツビジネスと呼ぶことに若干の抵抗があえるが、はたしてDeNAにとってスポーツが事業とは何か。岡村の答えの答えはこうだ。

「ベイスターズの試合がないときも街ににぎわいをつくりたい。そういう意味では、都市空間のプロデュース事業といってもいい。戦前は鉄道というハードインフラが起点となり、住宅や百貨店ができて街になりました。私たちがやりたいのは、スポーツというソフトインフラを起点としたまちづくりです」

いまやまちづくりの対象は横浜にとどまらない。DeNAは17年にBリーグの川崎ブレイブサンダースを買収。21年にはJリーグのSC相模原の株式を19%取得して経営参画した。横浜、川崎、相模原──。目指すは“相模の国”の国づくりである。


2017年、Bリーグ川崎ブレイブサンダースの運営権を東芝から引き継ぐ。昨季のホーム戦平均来場者数はリーグ最多、チケット売り上げは過去最高を記録。今年3月、第96回天皇杯で優勝。(写真提供=JBA)


2021年4月より、サッカーJ2リーグのSC相模原の経営に参画。トップスポンサーとしての協賛を開始し、J2基準を満たす新スタジアムを相模原市内に建設する構想も発表。(写真提供=SC相模原)

「まちや国がにぎわえば、スポーツビジネスの概念も拡大できる。スポーツから健康、教育、イベント、新しいコンテンツなどさまざまな事業が生まれてくるかもしれない」

スポーツ事業の売り上げは、コロナ禍の影響を大きく受ける前の20年3月期で、DeNA全体の17%を占めた。スポーツ起点の国づくりが本当に実現すれば、ゲーム事業に匹敵する主軸の事業に育ってもおかしくはない。

ただ、そこまで大がかりなまちづくり・国づくりは自治体の仕事ではないかという意見もある。そうした声に対して、岡村は──。(この続きは、Forbes JAPAN9月号でお読みいただけます)


DeNA◎1999年、現会長の南場智子が創業。eコマースからゲーム、ヘルスケアなどに事業領域を拡大。2011年に横浜ベイスターズを買収。横浜スタジアムへのTOBを実施し、16年に連結子会社化。

岡村信悟◎1970年生まれ。東京大学大学院(東洋史学専攻)修了後、郵政省(現総務省)入省。2016年にDeNA入社。横浜スタジアム代表取締役社長、横浜DeNAベイスターズ代表取締役社長を務め、21年4月、DeNA代表取締役社長兼CEOに就任 。


7月26日発売のForbes JAPAN9月号は「スポーツの『新しい稼ぎ方』」を大特集。なぜ1人のアスリートに1億ドルものお金が集まるのか? 企業のスポーツ投資は果たして元が取れるのか? わかるようでわからなかったスポーツ×マネーの関係を紐解きながら、スポーツがもたらすお金の力を浮き彫りにする!

文=村上 敬 写真=ヤン・ブース ヘアメイク=内藤 歩

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