ビジネス

2021.07.21

インスタカート新CEOに期待される「フェイスブックでの経験」

フィジー・シモとアプアバ・メフタ(c)instacart


シモは、「広告主にとってのROI(費用対効果)は、すでにそこにある。買い物客のカートには、まさに広告製品が入っている。カートは、広告の世界における聖杯なのだ」と語る。「私が今後推進したい取り組みの主要な部分は、さらに多様な広告フォーマットを追加し、できる限りすみやかに規模の拡大を図っていくことだ」

シモは、今年1月にインスタカートの取締役に就任して以来、メフタと関係を築いてきた。しばしば電話で連絡を取り合い、問題の分析や解決にあたってきた。この7カ月のあいだに、2人が電話で話し合う時間は長くなり、回数も増え、取締役就任から5カ月が過ぎた時の会話で、シモはフェイスブックを辞めることを考えるかもしれないとほのめかした。


フィジー・シモ

メフタはこの時、電話を切るとすぐに、3時間をかけてカリフォルニア州カーメルにあるシモの自宅に車で向かったという。

シモは、夜9時に突然始まった2人のミーティングについて、「メフタには非常に説得力があった」と振り返る。「アプアバ(・メフタ)と私が毎日の習慣になっていた電話での会話をしていると、夫からは冗談で、『君は最高に現場密着型の取締役だね』と言われることもあった。だが、実際の関係構築は、段階を踏んだ非常にゆるやかなペースで進んだ」

新CEOに期待される役割


今回のトップ交代劇は、メフタによれば100%自らのアイデアであり、投資家に強いられたものではないという。これによりインスタカートは、株式を上場している巨大テクノロジー企業で10年の勤務経験を持つリーダーを得たことになる。

フェイスブックは近年、各国政府の規制当局による反トラスト法違反の疑いに関する訴訟や、他の政治スキャンダルへの対応に追われてきた。こうした問題により、フェイスブックの情報収集が及ぶ範囲や、ユーザーの個人データの扱いに関するさまざまな疑惑が浮上している。同社を創業し、CEOを務めるビリオネアのマーク・ザッカーバーグは、厳しい批判の矢面にさらされてきた。

これは、メフタが痛いほどよく知るテーマでもある。物理インフラの多額なコストを負担している100以上の食料品店の信頼を維持することは、インスタカートの成功にとって不可欠な要素だ。このインフラがなければ、メフタが開発した配送アプリも無用の長物と化してしまう。



シモは、この関係がはらむ微妙なバランスが揺らぎ始めるなかで、CEOに就任することになる。インスタカートの広告事業参入は、スーパーマーケットの重要なプロフィットセンターに打撃を与えるものだ。一部には、「卵を産むニワトリの小屋にキツネを入れてしまったのでは」と懸念する向きもある。

2年前のマリ・クレールの記事では、シモは、フェイスブックの信頼回復への取り組みを担う幹部として取り上げられていた。そのシモは今回の決断について、「私は自分の役割にとても満足していて、他のことを考えることはなかったが、人生にはいろいろなことが起きるものだ」と語っている。

「(オファーを)受け入れる選択肢しかなかった。これは、ぜひ取り組むべき、信じられないほど素晴らしい冒険だと感じたからだ」

翻訳=長谷睦/ガリレオ 文中写真=Getty Images

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