シモは、これまでフェイスブックでアプリの責任者を務めていたが、インスタカートのCEO就任に伴って現職を辞することになる。今回のトップ交代は、2021年内と目されている同社の新規株式公開(IPO)を投資家が注視するなかでの動きとなる。
数多の危機を乗り越えて
アマゾンでエンジニアとして働いた経歴を持つメフタが、インスタカートのアイデアを思いついたのは24歳の時だった。そのきっかけは、ベイエリアに住んでいた際に、自宅の冷蔵庫にシラチャーソース(タイ風の辛いソース)のボトル1本しかなかった自身の体験だという。
アプアバ・メフタ
サービス開始当初は、依頼された商品の購入業務のほとんどを自ら担い、ウーバー経由で配達を行っていた。2013年にフォーブスの「30 UNDER 30」に選ばれたメフタは、2017年、最大の顧客だったホールフーズがライバルのアマゾンに買収された後の経営危機を乗り切った。また、2020年には新型コロナウイルスのパンデミックにより、数週間で通常の5倍に急増した需要に対応した。長年にわたってインスタカートの舵取り役を務め、成功に導いてきた。
インスタカートのサービスエリアは、今は北米の5500以上の都市に広がり、商品を購入できる小売店舗も5万5000店以上を数える。その評価額は390億ドルにまで膨らみ、細かいところまで気を配りながら一心に同社を率いてきたメフタ自身の資産額も35億ドル(約3800億円)に達した。
メフタはフォーブスの取材に対し、最近の成功により、さらに長期的な視点で物事を見るようになったと語っている。メフタは2021年に入り、別の取材でも「20年先を見据えた戦略を展開している」と述べていた。
そして今回、メフタが見据える未来の重要な部分をシモが担うことになった。シモは2019年からフェイスブックのメインアプリの責任者を務めており、同社の「新たな顔」の1人とうたわれていた人物だ。
フランス出身のシモは2011年にフェイスブックに入社し、ニュースフィードや動画、ゲームへのウェブ広告展開で、同社の収益化戦略を推進してきた。2019年に創設されたインスタカートの広告部門は2020年に15億ドルの売上を計上しており、CEO就任後のシモが特に注力する分野となるはずだ。