世の自動車メーカーは、電気自動車(EV)を送り出したとき、まさにそのとおりのことをした。
現在のEVの流れの先駆けが、BMWの「i3」だとしたら、14年に本格的なEVであるこのクルマを発表した際、従来とまったく異なるコンセプトのスタイリングで、新しさが強調されたのが印象的だった。それに対して、EVが多く発表されるようになった昨今、ひとつのトレンドを代表しているともいえるものを、ここで紹介する。
20年9月に日本導入されたフランス製のピュアEVプジョー「e-2008」の特徴は、見た目がほぼ、ガソリンエンジン搭載の姉妹車「2008」と変わらないことである。
「同等のデザイン、同等のスペース、同等の装備を提供し、お客様の好みや、ライフスタイルに合わせて選択可能」にしたとプジョー。つまり、EVはもはや特別な存在でないというのだ。
じっさいにドライブすると、プジョーの狙いがよくわかる。1.2リッターガソリンエンジン搭載の2008に対して、例えばバッテリーのぶんボディが重いとか、カーブを曲がるときに外側に出ていく傾向があるとか、そういう欠点は何もない。
さらなる長所もある。出足が軽快で、高速道路などでの追い越しは俊敏。走行中の室内は静粛性が高いのも特筆に値する点だ。スムーズに走り、足まわりの設定もしなやかで、乗り味が期待以上によい。優れた技術に裏打ちされた製品は、使用者が無理に慣れるものではない。自然となじむもの。e-2008も、気がついたら手放せないという存在になる可能性大である。
Peugeot e-2008 GT
ボディ外寸|全長×全幅×全高=4305mm×1770mm×1550mm
ドライブトレイン|電気モーター 前輪駆動
出力|最高出力100kW、最大トルク260Nm
一充電走行距離|385km(JC08)
価格|4700000円
問い合わせ|https://web.peugeot.co.jp/
パワーオブチョイスという電動化への計画が進行中
電動化において、プジョーで注目すべきは、Group PSA全体が採用している「パワーオブチョイス」戦略。純ガソリンエンジン、純ディーゼルエンジン、PHEV、BEV、FCV(水素燃料電池車でいまは商用車のみ)をひっくるめて、燃料規制とCO2排出量削減をはかっていく、というものだ。高価なEVを量産しても、買ってもらえないと意味がない、とプジョー。
本社でCEOを務めていたジャン=フィリップ・アンパラト(現アルファロメオCEO)は「あらゆる選択肢をプジョーは用意し、国や地域の規制に応じて最も都合のよいパワートレインを選んで決めてもらえばよい」というニュアンスの発言をしてきた。無理なく段階的に製品内容を変えていき、2025年にはすべての商品の電動化(PHEV、BEV、FCV)を完了させるのがグループの計画だそうだ。フランスでも時代は着々と変わりつつある。