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2021.07.22 11:00

東京五輪の金メダル候補が守ろうとしている「海の小さな命」

2019年12月にニュージーランドのオークランドで開催されたセーリング世界選手権の49er級レースで5度目のタイトルに輝いたピーター・バーリングとブレア・トゥーク /(c) Joshua McCormack


このアルバトロスの保護の問題はこれまで大きく扱われることがなかった。そもそも絶滅が危惧されるほどの数しか生息していないことに加え、ブレアは次のような理由もあるという。
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「アルバトロスは海を住処とし、風を利用して驚くほどの長距離を移動するため、何年も海で生活することができます。そのため、ほとんどの人は彼らを見ることがないので、あまり問題として取り上げられることがないのです。それで彼らの存在に親しんでいるセイラーたちは、この喫緊の保護を必要としている鳥たちの問題をみなさんに伝える責務を担っており、私たちは協力し合っているのです」

混獲問題での日本とニュージーランドの接点


実はいま、世界のアルバトロス22種類のうち、15種類が絶滅の危機に直面している。主な脅威は、漁業の際に誤って捕獲される「混獲」である。タスマン海や太平洋南部ではマグロ類を狙ったはえ縄漁で混獲され、毎年2000羽以上のアンティポデスアルバトロスが、溺死していると考えられている。すべての漁船が混獲防止措置を取らなければ、30年後には種の存続が不可能となってしまうであろうとも言われている。

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「混獲」されたアホウドリ(c)Graham Robertson
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ピーターとブレアが設立したLive Oceanは、絶滅の危機に瀕しているニュージーランドのアンティポデス諸島のアルバトロス種の採餌飛行の研究のため、追跡に使われる衛星発信機の購入資金を提供した。

「衛星追跡プロジェクトによって、このアルバトロス種が餌を獲る際に混獲の危険が高い海域で、どの国からの漁船が操業しているのかが分かりました」とブレアは言う。そして「つまりアルバトロス保護のためにニュージーランドがどこの国と協力するべきなのかがわかったのです」とも語った。

ブレアが指名した国の1つは、日本だった。日本はニュージーランド周辺の公海上で漁業を行っている国の1つで、海鳥の混獲のモニタリングと報告を、最も真摯に行っている国のひとつだという。

そして、日本が国際的なマグロ漁業管理組織に提出した報告書から、IUUと呼ばれる違法・無報告・無規制の漁業を含む漁船や船団で何が起こっているかを洞察することができるそうだ。

混獲の被害は漁業者の努力で回避できる。クロマグロ漁業で、世界で初めて国際エコラベルであるMSC認証を取得した、宮城県気仙沼市の臼福本店の臼井壮太朗社長は次のように語る。

「日本の遠洋漁業者は水産庁にどのような混獲回避措置をするか、事前に報告する義務があります。項目には、餌のついた釣り針が海鳥にとって見えにくい夜間にはえ縄を仕掛ける夜間投縄、釣り針を早く沈めるための重いおもりをつけて釣り針が速く沈むようにする加重枝縄、海鳥を遠ざけるためにはえ縄の上空に曳航する長いロープにすだれ状に紐を垂らすトリラインなどの吹き流し装置などがあり、混獲を防いでいます」
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文=井植美奈子

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