東京五輪の金メダル候補が守ろうとしている「海の小さな命」

2019年12月にニュージーランドのオークランドで開催されたセーリング世界選手権の49er級レースで5度目のタイトルに輝いたピーター・バーリングとブレア・トゥーク /(c) Joshua McCormack


ちなみに、トリラインは日本人の船頭が考案し、いまでは混獲の効果的な対策として世界中で使われているという。またタスマン海と太平洋南部をはじめ、指定された漁場で操業する漁業国は、漁具を仕掛ける際に前述の3つの項目のうち2つを実施することが国際規則で義務付けされている。臼井社長が続ける。

「日本の遠洋マグロ漁船はこのような混獲対策を20年以上前から行っていますが、中国、台湾、東南アジアなどの船はいまだに大多数が行っていないのが現状です。それらの船から魚を買い付けることは、いま国連の主導で世界から撲滅しようとしているIUU漁業を援護する行為になります」

まさに日本には、世界有数の水産物消費大国として、今後もしっかりとした管理漁業を推進し、アジアや世界をリードする責務があるのだ。

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アルバトロスのつがい(c)長谷川 博/東邦大学

いみじくもブレアが指摘したように、海鳥の混獲に関してニュージーランドと日本には大きな接点がある。また両国とも海に囲まれた島国であり、漁業は文化、食生活、経済の面で重要な意味を持っているので、民間ベースでも互いに良い理解者や協力者となりうるだろう。

ピーターとブレアは、オリンピックで操縦する彼らのヨットを、ニュージーランドの先住民であるマオリ族の言葉で「アルバトロス」を意味する「Toroa」と名付けた。

オリンピックは本来スポーツの祭典だ。主会場である東京がコロナ禍による緊急事態宣言下での開催だけに、賛否両論もあるだろうが、スポーツマンシップの爽やかな感動を期待している人も少なからずいるはずだ。

この機会に、ピーターとブレアのように、アスリートたちのパフォーマンスはもとより、真のスポーツマンシップから生まれる社会貢献、未来の地球への責任感に目を向けるのも、意義あることではないだろうか。

連載 : 海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
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文=井植美奈子

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