企業変革についても同様だ。企業変革というと、経営層による「戦略」「組織デザイン」を起点に考えることが多い。ただ、私はむしろ、「ポジティブデビアンス(ポジティブな逸脱者)」の発掘からスタートすることが大事だと考えている。そして、同人材の発掘と支援を入り口にして、支援する人々が育つことが何よりも重要となる。
新規事業であれば、イントレプレナー(社内起業家)の育成に視点が集まりがちだが、コーポレート部門をはじめとして「支援者」としてのスキルを育てることが肝心だ。経営層とイントレプレナーと支援者がうまく連動できる状態をつくることが、企業変革で大切なポイントになるだろう。イントレプレナーと支援者が新しい事業や取り組みへの支援を行うことで、社内の「価値基準」を変革し、「組織デザイン」や「戦略」を変えていくという順番が大事だと考える。
経営層から現場まで、レイヤーごとにバラバラに変革の話をしているのがいちばんの問題だろう。有機的に連動することで、大きな力になる。慢性疾患のケアなので、一発の介入ではなく、仕組み化して、継続的にケアし続けることが大事だ。
宇田川元一◎埼玉大学経済経営系大学院准教授。専門は経営戦略論、組織論。ナラティブ・アプローチに基づいた企業変革、イノベーション推進の研究をしている。著書に『他者と働く』『組織が変わる』。