6社で運営、約110社が参加 ワクチン共同職域接種を支えた工夫

共同職域接種会場の様子


ミクステンドは昨年10月からNagatacho GRiDのシェアオフィスメンバーとして利用登録しており、今回の接種の案内を受けたのだという。

「登録したら全員が接種に強制参加しないといけないとか、接種対象者の条件として雇用形態に条件があるなら、弊社のポリシーに反するのでちょっと違うなと感じていたと思いますが、そういった縛りがなかったのは大きなポイントでした」

“アントイレプランナー”としてトイレの研究を行い、フリーランスで講演やメディアでの活動を行う白倉正子は、自治体の接種と比べて早かったことが参加の決め手となったという。

「私が住む地域では接種の日程が未定で、もしワクチンを来月に打てたとしても、健康で外に出ていい状態になるのは9月下旬頃になる。であれば、早く打てた方がいろいろな可能性が出て来るのかなと考えました。

私の場合、社員がいるわけでもお店を構えているわけでもなく、極端に言えば家でじっとしていることもできるので、他の方のワクチン接種の優先度が高いのは仕方ないなと割り切っていました。ただ、主婦であり、個人事業主である=会社員ではない人生を選んでいて、結局は社会から忘れ去られているんだろうなという、そういう寂しさとか物足りなさはありました」

自分らしい生き方を支えたい


今回の共同職域接種の実施を決定した思いについて、松田はこう打ち明けた。

「もともと自治体で接種が行われるのを見て情報収集するなかで、ノウハウを集約すればもっとうまくできると、勝手に接種オペレーションを考えてたんです。その後、共同での職域接種が可能だと報道されたので、会場さえ押さえられればできるのではないかと。

また、弊社はカスタマーサポートやSNSをモニタリングする仕事を行なっているので、クライアントとの兼ね合いでリモートワークが禁止されていて、家で業務ができなかったりするんです。そのため職域接種参加へのニーズ自体が弊社内でも高かったこともあります」

一方、流はこのプロジェクトに参加した狙いについて語った。

「私は世の中全体が、一つのプロジェクトだと思っています。ベンチャーが先進的な取り組みを行い、それが大企業にも徐々に広まり、世の中に浸透して変わっていく。ですが、当初は大企業だけが接種できますと言われ、悔しい思いがありました。

また、企業に所属している人や大企業に勤める人の方が有利で、『寄らば大樹の陰』となっていくと、自分らしい生き方をできる人が少なくなっていくのではないでしょうか。そうした循環は良くないと思い、自分たちだからできることがあると感じたからこそ、共同職域接種に参加しました。

こうしたプロジェクトを私たちがずっと運営していくというよりも、今回の知見が広まり、もし将来同じような状況に直面することがあったら、どの企業でもスムーズに職域接種を行える状態になることが望ましいと思っています」

ワクチン接種のオペレーションを巡っては混乱も生じているが、今回の共同職域接種の事例のように、中小規模の企業ならではのスピード感や柔軟性を生かした方法を積極的に共有し、行政など他のワクチン接種の現場でも生かしていくべきではないだろうか。

文=河村優

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