ミスコンへの軽蔑心と潜入任務。女性捜査官が相反するミッションを迫られたとき


この後、さまざまな条件からグレイシーしかミスコン候補がいないという消極的な結論が出るのだが、それをエリックがグレイシーに説得するのは、レスリングで取っ組み合っている最中だ。

「ミスコンに出る女はバカ」と反発しつつ、技をかけてエリックの優位に立つグレイシー、負けじと技を返すエリック。どっちが勝つか賭けている同僚たち。ここでは「男女互角」がわかりやすく表現されている。

ミスコン主催者で元ミスコン優勝者のキャシーの人物造形も、なかなか興味深い。長年ミスコン開催に情熱を捧げてきた彼女は、グレイシーの潜入捜査を渋々認めるも、ミスコンに対する相手の軽蔑心を敏感に感じ取っている。

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(c) 2000 Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

「フェミニスト、インテリ、ブス。私たちの敵はあなたのような女」と毒づくキャシーの台詞は、「理想的な美」に近づきたいと熱望して日々努力を重ね、ミスコン批判を疎ましく思うような女性の感情を、凝縮したかたちで代弁しているかもしれない。

全米から集合した各州の代表たちの、バックステージでの率直な言動や生き生きした個性と、ステージ上での演出的な個性の違いも面白い。

それぞれが歌やバトンなど特技を披露しつつも、水着審査や合同ダンスは一糸乱れぬ統制ぶりで、スピーチで述べる願望は申し合わせたように「世界平和」。

そうした表向きは画一的な集団性の中で、グレイシーに興味を持ち、自身の素直な心情を吐露するミス・ロードアイランドのシェリルは、ミスコンを通して心の傷や弱さを克服したいとする女性の1つの典型だろう。一方で彼女は「姫」であり、最終的にグレイシーは「姫を救う王子」の役割を果たす。

個性と画一性が入り乱れる中で、さまざまなハプニングに見舞われながら、トップ5に残るグレイシーとシェリル。一見意外だが動機がわかってみればなるほどと思わされる犯人像。ミスコンの熱狂の高まりとテロの脅威の高まりがシンクロしていく終盤はスリリングだ。

見違えるほど美しくなり、困難をくぐり抜けて重要なミッションを体当たりで果たし、ミスたちの尊敬を集め、恋人も手に入れる出来過ぎな結末も、バランス視点とユーモアによって気持ちよく受け取れる。

連載:シネマの女は最後に微笑む
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『デンジャラス・ビューティー』ブルーレイ2619円(税込)特別版DVD1572円(税込)/発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント・販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント/(c)2000 Village Roadshow Films (BVI) Limited. All rights reserved.

文=大野 左紀子

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