真に目指すべきは「ライフスタイルブランド」への変革
それでは単にDX化を目的にせずに、トップは具体的にどのようなビジョンを設定していけば良いのだろうか?
そのためには、もう少しブランディング寄りの視点が必要となる。
日本の企業がグローバル化していく市場でユーザーから認知されるためには、Red BullやNikeなどの「ライフスタイルブランド」( “提供する商品やサービスの裏にある信念やストーリーに共鳴した消費者が、自分自身の価値観、願望、生き方を具現化し、共通の意識をもったコミュニティーの一部になれると感じられるブランド” )に代表される、他社とは比べられない圧倒的な存在を目指していくことが重要である。熱心なファンを獲得し、ユーザーの感情に訴求しながらコミュニティー生成に繋がる活動に巻き込めるレベルまで高められるかが問われている。
「ライフスタイルブランド」変革への1st Step
ユーザーから熱狂的に支持されるためには単にユーザーニーズを捉えれば良いということではなく、企業・ブランド側の想いをストーリーとして発信していくことが特に重要になる。
日本の企業は良い技術を持っていてもブランドストーリー作りがあまり上手でなかったり、せっかく熱狂的なファンが存在していても「なぜそのファンたちが自分たちのブランドを支援してくれているのか分からない」「企業からの発信とユーザー側からの受け止められ方がズレている」といったもったいないケースも存在している。
これらを解決するためには、「まず作り手である企業・ブランド側に存在するBrand Component(ブランドを形作る要素)とユーザー側のUser Insight(ユーザーが抱えているニーズを満たすための要素)を言語化すること」、そして、そこから導かれる「その企業にとってのCore Value(ユーザーに対して提示する価値観)を明確化していくこと」が必要である。
ブランドのCore Valueの構成要素 (ビートラックス社内資料より)
デジタルの活用に必要なのはCX視点
その上でCore Valueをユーザーに体感してもらう手段を考えていくのだが、ここで初めてデジタルの活用が鍵となる。
デジタルを活用するためには、「ユーザー・エクスペリエンス(UX)視点のみならず、カスタマー・エクスペリエンス(CX)視点を持つこと」がより重要となる。
プロダクトの質を上げること以上に、顧客と企業との全ての接点における体験の質を上げることにフォーカスしていく必要があると言い換えることもできる。プロダクト以外のブランドイメージ、マーケティング、カスタマーサポートなど、あらゆる体験をデジタルの力によって一貫した体験に作り上げていくことを考慮していくことが重要だ。
デジタルを活用したファンコミュニティの醸成
また、ライフスタイルブランドとして成長していくためには、ファンとの繋がりを増やし、ブランドとユーザーのコラボレーションを加速させていくことも重要である。
その点でデジタルの活用はとても強力なツールとなりうる。デジタルを活用することでユーザーとの対話がしやすくなる、ユーザーからのフィードバックを得られやすいといった効果が期待できるとともに、ブランドとユーザーとの間で継続した長期的な関係を築いていくことが可能になるからだ。
まとめ:「ライフスタイルブランド」への変革を目的としたDXの推進
今回は日本企業のDX化が失敗する理由の考察から「ライフスタイルブランド」への変革を目的としたDXの推進を提言してきた。
ライフスタイルブランドの域まで高めていくことは容易ではないが、熱烈なファンを惹きつけていくためには、単にユーザの期待に応えるだけでなく企業側の想いを明確に伝えていくことが重要で、DX推進だけにフォーカスしていると、こういった観点は見落とされやすい。
また、熱烈なファンを惹きつけていくためにデジタルをいかに活用していくかという命題に置き換えることでより具体的なアクションに落としていくことが可能で、日本企業のデジタル活用を一歩前進させていくことにも繋がるだろう。
※この記事は、btraxのブログFreshtraxから転載・編集されたものです。
※過去の配信はこちらから。