「引き算の幸せ」を教えてくれる。神の住む島、奄美の魅力

奄美リゾートホテル「THE SCENE」にて (C)THE SCENE


また、ウェルビーイングを語る上で「食」は欠かせない。THE SCENEでは奄美大島の食材を使い、シンプルな調理方法とこだわりを披露する。ここの食が気に入り、リピートする顧客も少なくないという。イタリアンは唐辛子とにんにくを使わずに旨味を引き出し、和食は鹿児島の食材をふんだんに使った体に優しい味付けになっている。



引き算の幸せ


THE SCENE 支配人の小林良輔は、2014年、支配人就任とともに東京から奄美大島に移り住んだ。元々東京で車のセールス事業に在籍していたという小林は、東京在住時代、数字を追う職業柄、何でも「一番」にこだわっていたという。

「一番いいものを食べ、いい洋服を着、いい車に乗る。そして、一番いいところに住むことが幸せの価値観だったんです。しかし、奄美大島に来て、いい車乗っていても誰も羨ましがらないし、誰も時計のブランドを気にしない。それで、どんどん手放していくと、見えてきた新しい価値観、幸せの形があったんです」


THE SCENE 支配人 小林良輔氏

新しい価値観、幸せの形──。奄美におけるそれのベースになるのは、絶対的な自然であろう。

「ここに住んで7年になりますが、自然って飽きることがないんです。毎日違う顔を見せてくれる自然に、日々感動しています。私が大好きな瞬間は、部屋でカーテンを開けて寝るとき。すると、朝、自然と太陽の光で目が覚め、窓の外に広がる海と自身が一体化し、海の上で目覚めたような感覚になるんです」



いまや、海やビーチ、山や高原のリゾート地だけでなく、贅沢な非日常を味わうホテルなど、「国内リゾート」と呼ばれる場所は数多くある。ただ、小林によると、THE SCENEを訪れる顧客たちは、他のリゾートに比べ、人工物が入っていない、ありのままの自然を求めて、奄美を選ぶことが多いのだという。

「先日、お客様に何が一番良かったですか? と伺ったんです。そうしたら『空気』と言われて、ハッとしました。私たちは様々な形でホスピタリティを提供していますが、やはり自然の絶大さを改めて感じました」


小林支配人取材中、見つけたヤドガリ

奄美大島、世界自然遺産へ


奄美大島はこの7月にも世界自然遺産に正式決定する予定だ。登録されれば、国内の世界自然遺産として5件目となる。恐らくこの決定をきっかけに、国内外ともに奄美は益々注目されることになるのだろう。

奄美の自然、そして、特殊な気候は、これまで他では見られない豊かな動植物の生態系を生み出してきた。たとえば、アマミノクロウサギ、アマミイシカワガエル、ルリカケスなど、大陸では絶滅した希少な固有種が生息し、あちらこちらにクロウサギの交通事故を防止するための看板も設置されている。

また、ホテル目の前のプライベートビーチでは、スタッフいわく「100%ウミガメに遭遇できる」といい、実際、この旅に同行していた女性はシュノーケリングで2匹のウミガメに出会ったという。


(C)THE SCENE
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取材・文=谷本有香 写真=藤井さおり

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