いつどこで起きてもおかしくない 土砂災害と豪雨から身を守るには?

7月3日に静岡県熱海市伊豆山地区で発生した大規模な土石流。19日現在、現場では捜索活動が続く (Getty Images)


──都市部でも斜面崩壊リスクはあるのでしょうか。

蚊爪:都市部では、建物や道路がある場所は排水路が設置されていますが、従来の雨に耐えられる排水処理しかできません。最近は温暖化の影響か、雨の降り方が激しくなり、処理しきれない水が流れてくるようになってきています。

例えば、ある首都圏の県道沿いで土砂災害が発生したケースがあります。火山灰が降り積もってできた粘土のような赤土である「関東ローム層」は、かつては急勾配で切っても崩れませんでしたが、最近では今まで経験したことのない雨が降り、崩れ落ちてしまう事例がありました。その場合、従来よりも強度の強い斜面や排水処理の増強などが必要になってきます。

斜面リスクを不安定化させる要因は、やっぱり水なんですね。溢れ出た水が本来流れないような場所に流れて、土砂崩れが発生します。近年、都市型水害が増えており、今後もリスクは増大していくでしょう。

豪雨災害に備え、できること


──地質調査のエキスパート企業「応用地質」で開発された、AIを活用した最新の斜面防災システムとは。

蚊爪:土砂崩れを検知する傾斜センサーと、川の増水で氾濫するのを検知する冠水センサーなどを総称して「ハザードマップセンサソリューション」と呼んでいます。広範囲で設置し、面としてモニタリングできるのが特徴です。

地すべりは深さ十数メートルや数十メートル規模で崩壊するものですが、そうではなく1~2メートルの浅い崩壊リスクのある「0次谷」について、表層の土が崩れる「急傾斜地の崩壊」などのリスクを地形図のデータを用いて、AIで自動判別できるようにしています。

AIで斜面崩壊を予測するシステムではありませんが、従来は技術者が地形をマニュアルで判読していたのに対して、大規模な地すべりに備えて、より早く手軽にリスクを判別できるようになりました。

──最後に、豪雨災害で身を守るために呼びかけたいことは。

千葉:自分が住む土地の災害リスクを調べることと、逃げることですね。まずは各自治体のハザードマップで水害や土砂災害のリスクを確認し、避難場所や避難所の位置をチェックしておくことが必要です。

土砂災害の危険箇所はたくさんあり、雨の降り方や地盤の複雑さによってどこが崩れるかなかなか分かりません。そこで、ご自宅が水害や土砂災害のリスクがある地域に入っている場合は、気象警報に応じて避難する必要があります。

気象警報は大雨注意報、大雨警報、大雨特別警報などがあり、大雨警報発表中に土砂災害の危険性が高まった場合に土砂災害警戒情報が発表されます。その市町村や地区のどこかで土砂災害が発生する可能性があるということです。土砂災害警戒情報が発表されると市町村長が避難指示を出すきっかけになります。

ですが、そこには人の判断が入ることに加えて、地域によって雨の降り方が異なり、地盤の複雑さにより、地域によっては必ずしも避難指示が出るとは限りません。なので、大雨警報や土砂災害警戒情報が出された時点で、自主避難することも大切ではないかと思います。たとえ災害が発生しなくても、空振りしたのではなく安全に逃げられてよかったと思うことです。

また夜で逃げられなかったり、危険が差し迫ったりした場合は、家の中でも崖から離れたり、建物の2階以上に移動する「垂直避難」をしたりして、安全を確保してください。

土砂災害には地震による災害も加わりますが、年間約1000件が発生しています。また、ここ30年ほどの間に短時間でまとまって降るなど雨の降り方が激しくなっていることがわかっているので、リスクに備えることが必要です。

文=督あかり

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