ビジネス

2021.07.20

「成長の企業文化」の承継と最適化で、超高齢化社会の課題解決を目指す

写真=吉澤健太

介護・医療・保育分野の人材紹介・派遣サービス大手のトライトグループは、新経営体制と企業文化の新結合で、上場と社会課題解決を目指す。


「コロナ禍で競合が苦戦するなか、前年比18%成長できた。IPO(新規株式公開)を目指す新経営体制のなかで、創業以来の『成長のDNA』である企業文化をうまくいかせていることが要因だ」

そう話すのは、介護・医療・保育分野の人材紹介・派遣サービス大手のトライトグループ代表取締役社長CEOの笹井英孝だ。同社は2004年設立で、介護・保育の人材紹介分野で業界1位、看護人材紹介では2位のシェアをもつ(調査会社推計)。「超高齢化社会の課題解決に挑みたい」と、医療機器メーカーのオムロン コーリン代表取締役社長、セント・ジュード・メディカルの経営トップを歴任した笹井が19年11月に社長に就任した。新経営体制も、CFO、CMO、経営企画本部長、CHROをはじめ、業界で知名度のある企業からトップタレントを招聘(しょうへい)した。そのなかで、笹井が強調するのは、コンプライアンスやガバナンスを上場に向けて強化しながら、脈々ともち続けている文化をいかに最適化して承継するか、だという。

「僕らの強みは、16年以降、毎年40%成長してきた『圧倒的成長力』と『若さ』。コロナ禍では、戦略の軌道修正や方針策定など、営業を統括する、生え抜きで30代の常務と議論を繰り返しました。最終的には社長の意思決定に従ってほしいと伝えているのですが、決定後の『変化の速さ』はこれまで見たことがない」

その象徴が、20年4月の緊急事態宣言下の出来事だという。営業側は、成長や生産性を維持するために全員オフィス勤務を希望したが、上場を目指し、かつ、看護師や介護士といったエッセンシャルワーカーを相手に事業を展開している同社だからこそ、テレワークへ移行することを笹井は決断した。

「その意思決定をした2日後に、事業部ごとに完璧な在宅勤務マニュアルをつくってきた。そのスピード感が成長を支えているんだなと」

トライトグループはその成長力を生かして既存事業を進めるとともに、新たな取り組みもはじめている。スタートアップと連携し、業界のDX(デジタルトランスフォメーション)を推進し、採用、育成、定着において、現場を支援する。例えば、21年1月にアルト社とともに提供開始した、介護業界特化のエンゲージメントサービス「介護thanks!」もその一つだ。また、今年中には、都市部との介護・医療格差が広がる地方への展開強化としてさらなる拠点の開設を予定している。

「既存事業で確かなネットワーク構築ができているからこそ、人材紹介以外にもできることは多い。国家的な大きな社会課題だからこそ解決に向けてこれからも挑戦、貢献したい」


笹井英孝◎トライトグループ代表取締役社長CEO。国内大手銀行、外資系コンサルティングファームなどを経て、2005年医療機器メーカー・オムロン コーリン代表取締役社長に就任。その後、セント・ジュード・メディカル、ライフドリンク カンパニーで経営トップを歴任。19年11月から現職。

文=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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