NBCの兄弟会社であるユニバーサル・ピクチャーズは、スピルバーグが1981年に設立したアンブリン・エンターテインメントにオフィスを提供し、「ジョーズ」「E.T.」「ジュラシック・パーク」「シンドラーのリスト」などの配給を手がけてきた。
しかし、ストリーミング企業との契約に関してスピルバーグは、NBCユニバーサル傘下のPeacockを避け、市場のリーダーであるネットフリックスを選択した。6月21日、ネットフリックス共同CEOのテッド・サランドスは、スピルバーグ率いる製作会社アンブリン・パートナーズと複数年契約を結んだことを明らかにした。
「スティーブンはクリエイティブなビジョンを持ったリーダーであり、私は彼の作品を観ながら成長した。アンブリンのチームと一緒に仕事をするのが待ちきれない」とサランドスは声明で述べた。契約内容の詳細は明らかにされていない。
スピルバーグは2018年に起きたネットフリックスの映画「ROMA ローマ」をめぐる騒動で、「ストリーミングの映画はアカデミー賞の選考対象から除外すべきだ」と発言するなど、「反ネットフリックス」的立場をとることで知られていた。そのため、彼がネットフリックスと契約を結ぶのは皮肉なことにも思えるが、彼の決断は、立ち上げから1年を経たPeacockの苦戦ぶりを明確にした。
NBCのストリーミングは業界8位で低迷
調査会社Parks Associatesによると、Peacockの2つのサブスクリプションサービスのいずれかを利用するブロードバンド世帯はわずか10%で、Peacockは主要なストリーミングサービスの中で8番目に位置している。つまり、彼らはネットフリックスやアマゾン、Huluなどの先行者たちに大きく水をあけられているのだ。
さらに、Peacockは、パンデミックにより映画やテレビの制作が中止されたため、立ち上げ当初からオリジナルコンテンツ不足に悩まされ、2020年の東京オリンピックの延期がそこに追い打ちをかけていた。NBCユニバーサルは、今年の東京大会の放送について、体操や男子バスケットボール米国チームの試合など一部の人気競技を、Peacockで配信すると述べている。