新規感染者5万人で規制ルール全廃 英国で考える「自由と責任」 

英イングランドでは、7月19日にマスク着用義務が解除される(Getty Images)

英国ではデルタ変異株が猛威を振るっており、7月13日まで7日連続で1日あたりの新規感染者数が3万人を越え、15日には4万8550人と再び急増した。元財務大臣サジド・ジャヴィド保健相は、今回の第3波は8月中にピークを迎え感染者数は10万人を越えるであろうと最近発表した。

ワクチンの効果は確実にあり、死亡・重篤・入院者数や比率は相対的にいえば減少した。しかし、10万人ともなれば、毎日100〜200人がコロナで亡くなるという(7月15日の死亡者数は63人。第2波ピーク時の1月20日は1820人)。また、ワクチン未接種の若者を中心に急増している一日の新規入院者数も、感染者数が10万人になれば2000人近くになるとも言われている。

ワクチンも無敵ではない


現在、英国の“総人口”(約6700万人)のワクチン2回接種率は、51.37%(7月14日現在)である。7月7日、6万人の観衆がロンドンのウェンブリー・スタジアムで熱狂したサッカーEUFA欧州選手権2020準決勝の日にようやく半数を越えたばかりだ。

日本の報道では、英国で使われることの多い「18歳以上の成人」の接種率、かつ1回接種の87.3%が強調される傾向もあり、英国は約9割が完了している“ワクチン先進国”の印象があるかもしれない。しかし、最も活動的でウイルスの運び屋となる若者や子供たちの多くが未接種のままだ。それに、ここへ来てワクチン接種へ行かない18〜24歳の若者が多く、「18歳以上の成人」の接種率は、前日比0.2%〜0.4%程度しか増えていない。

7月14日には「18歳以上の成人」の3分の2が、2回の接種を完了したと伝えられたが、実のところ17歳以下の通う学校での集団接種でも始まらない限り、ほぼ頭打ちと言って良い。



データを見る限り、ワクチンが入院・重篤・死亡数を減らす効果は確かだが、今年1月にコロナに感染した身としては、「ワクチンを2回打てば感染しても重篤にはならないんでしょ?」といった軽い考え方にはとてもならない。入院こそしなかったものの、自宅で数日間ベッドから起き上がれずかなり辛い思いをしたし、狭心症も何度か来て、再入院や死の恐怖を感じた時もあった。それに、少しだが後遺症もある。

新たな変異株が次々出現する一方で、感染やワクチンによる抗体レベルは時間とともに低下する。そのためなのか、あるいはデルタ株の感染力が極めて強いからは分からないが、既に私の周りには2回接種済みで感染した人が増え始めている(第2波に比べ検査数は2倍近く多い)。また、子供を含めて、いわゆる「Long Covid」に長期的に苦しむ人も多くいると聞く。
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文=平井元喜

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