消費者のハードルをどう下げる? 環境先進都市の「量り売り店」の試み

アムステルダムでも、量り売りの食料品店は数店だ(Getty Images)


量り売りのハードルが高いワケ


そんなウィンターさんは、サーキュラーエコノミー先進国オランダに量り売り食料品店が少ない理由についてこう推測する。

「量り売りって、消費者にとってかなりハードルが高い。それは、きっと量り売りという買い物のスタイルが、ユーザーの労力を多く必要とするからだと思うんだ」

夕食を用意するときを例にとってウィンターさんは説明する。外食なら他の人が調理して運んできてくれるのを待っていれば良いし、出来合いのものを買ってくる中食も、すでに出来上がったもののなかから選んで購入し持ち帰るだけなので楽だ。こうした外食・中食に比べて、自炊する際の手間がどれだけ多いかは想像がつく。どんな料理を作るか考えて、そのために必要な材料を自分でピックアップして買わなくてはいけないからだ。

「それに加えて、量り売りの店では『買う量』まで決めなくちゃいけない。スーパーなら、小麦粉1袋、シナモンパウダー1瓶を掴んでレジに持っていけばよかったわけだけれど、量り売りの店じゃそうはいかないよね。普通のスーパーに行く以上に『どの材料がどれくらい必要なのか』をきっちり考えなくちゃいけないし、その量がきっちり収まるだけの入れ物も持参しなくてはいけない。その後には、実際に調理するという手順もあるしね」

このような消費者の労力に加え、もともとオランダにはあまり料理をする文化がないため、量り売りのハードルが余計に高いのではないかと彼は言う。

ヴィーガン
人々のつどいの場にもなっている、小さなヴィーガンカフェスペース

しばらく話をしていると、ウィンターさんは筆者を奥のカフェスペースへ案内してくれた。「好きな茶葉を選んでおいで、ごちそうするよ」と彼は言う。筆者が選んだジャスミングリーンティーと皿にのせたクッキーをテーブルに置いて、彼はまた話し出した。

「消費者の労力を必要とする量り売りのシステムを根付かせるためには、店側の努力も必要だと思うんだ。例えば、消費者が仕事帰りに買い物をして帰ろうと決めているとき。重いガラス容器を職場へもっていくのは大変だよね。帰り道にふと『買い物をしてから帰ろう』と思い立ったのに、容器がないから買い物ができないというのも困る。こういったことを解消するために、うちではお客さんの容器をデポジットとして預かり、商品をデリバリーするサービスを始められたらいいな、と考えているよ。

それから、このカフェ。お客さんのほうからキッチンが見えるようになってるでしょう。さっき、オランダにはあまり料理をする文化がないと言ったけれど、それはどうしたらいいかがわからないからだと思う。それなら、ここで作り方を見て覚えていってもらえればと思っているんだ。必要な材料と分量、作り方までわかったら、料理をするハードルはかなり下げられるはず。そのきっかけがつくれたらいいなと思っているよ」
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文=IDEAS FOR GOOD 編集部

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