ビジネス

2021.07.19

人と組織の創造性よ、輝け 「生命システム」という組織デザイン原則


CCMが示す通り、組織とは、有機的な生命システムである。そして組織を支援する方法論もまた、本来は全体論的なアプローチであるべきだ。しかしながら現代の組織論は、機械論的に分断され、各論として発展を遂げてきた。採用、育成、マーケティング、生産管理など、専門化が進み、書店のビジネス書棚は、局所的な処方箋にあふれている。

組織という複雑な生命システムを一面的に切り取ろうとすると、私たちは近視眼的な二項対立に狭窄(きょうさく)されていく。昨今の議論の的である「デザイン思考か?アート思考か?」といった問いが、象徴的だ。

ヒト(衝動)に向き合うべきか、コト(哲学)を見据えるべきか。重視すべきは、ハコ(組織)か、モノ(事業)か。CCMは、このような安易な二元論に陥らないための態度の表明でもある。また、樹木はその断面を切り取ると、木が生きた証しである「年輪」が現れる。これはまさに、刻一刻と変わり続ける過程(変化)と、変わらない軸を残していくこと(安定)の葛藤を両立した象徴でもある。

人体が交感神経と副交感神経のバランスで成り立っているように、組織は常に、複雑な葛藤のなかで成り立っている。目先の課題解決のために、矛盾を解消しようとせず、高次に「止揚」させようとすること。そのためには、組織が生命としての主体を持ち、自分たちで考え続けなければならない。そのための行為こそが、CCMの中央に位置する「対話」にほかならないのである。


あんざい・ゆうき◎MIMIGURI Co-CEO。東京大学大学院情報学環特任助教。1985年生まれ。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。2017年ミミクリデザイン創業。21年3月ドングリと合併し現職。共著書に『問いのデザイン』(学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』(翔泳社)など。

文=安斎勇樹

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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