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組織の創造性を賦活するための指針として、筆者らが掲げる「Creative Cultivation Model(CCM)」が役に立つ。これは、組織の創造性が階層的に発揮され、接合している状態を樹木に見立てて表した模式図である。CCMは、具体的な手順を示したモデルではない。組織の創造性の全体性を見失わないように、健全さを保つための見取り図といえる。


創造的組織を生む「Creative Cultivation Model(CCM)」 (c)MIMIGURI

まず、組織の心臓としての「哲学」が掲げられているかどうか。「哲学」とは、経営理念、ビジョン、ミッション、パーパスなど、さまざまな形式が考えられるが、在り方が組織の内外に向けて明確に言語化されていることが重要である。何年も前に掲げた理念が、形骸化してしまっている企業は少なくないはずだ。コロナ禍は、多くの企業にとって自社の理念を見つめ直す機会になったはずだ。

続いて、「哲学」を体現した「事業」と「組織」の構造がかたちづくられているか。具体的には、事業が哲学を体現するための手段になっているか。組織の評価制度やレポートラインにも、目指す哲学が反映されているか、などの観点が重要である。地上にそびえ立つ「組織」「哲学」「事業」の構造を、一貫させながらも刷新し続けることが、イノベーションに直結する。

他方で、組織の問題の多くは、目に見えない“地中”から引き起こされる。深くに根を張っているのは、個人の内から湧き上がる「創造的衝動」である。何かを「つくりたい」という誰もが幼少期からもつ衝動がふさがされたままでは、組織の創造性は根本的に抑圧されてしまう。

個人の衝動が解放されれば、マネジャーやファシリテーターが適切な「問い」をデザインすることによって、チームの「創造的対話」と呼ばれるコミュニケーションが回り始める。

そもそも「対話」とは、意見の正しさを決める「討論」や合意形成や意思決定のための「議論」とは異なる。お互いの見えない前提を相互理解し合いながらも、事実に対する「意味づけ」を重ね合うようなコミュニケーションを指している。

その上で、新しい意味(アイデア)を生み出そうとする対話のことを、「創造的対話」と呼ぶ。日々の組織開発や事業開発は、掲げた「哲学」に合致していることも重要だが、チームの対話によって紡がれた「意味」に支えられていることが、何より重要である。

最後に、掲げている「哲学」が現場に浸透し、個人やチームに影響力をもっているかどうかも重要だ。優れた理念は、現場を刺激し、一人ひとりの衝動を覚醒させ、チームの創造的対話の基盤になる。日々交わされているコミュニケーションに、自然と「哲学」が反映されていれば、理想的だ。

そして、日々の現場の試行錯誤は、ときに既存の「哲学」に揺さぶりを与え、組織の新しい可能性を開くことがある。そのように、ボトムアップに組織の在り方が再解釈され、更新されていく風土があるかどうか。CCMの縦のラインの相互作用も、忘れてはならない。

文=安斎勇樹

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