わかる人にはすぐわかる「大人」なラグジュアリーバッグ

Forbes JAPAN本誌で連載中の『紳士淑女の嗜み』。ファッションディレクターの森岡弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る。今回は7月号(5月25日発売)より、「ボッテガ・ヴェネタ」のトートバックをピックアップ。


小暮昌弘(以下、小暮):これはかなり迫力あるトートバッグですね。

森岡弘(以下、森岡):イタリアのラグジュアリーブランド「ボッテガ・ヴェネタ」のバッグです。トートバッグはそれぞれの革が大きくなっていますが、短冊に切った革を手作業で編み込んだ「イントレチャート」で仕立てられています。

小暮:「ボッテガ・ヴェネタ」のトレードマーク、アイコンですね。それにしてもこの「イントレチャート」はオーラ満点です。

森岡:「ボッテガ」はイタリア語で「工房」を意味しますが、「イントレチャート」は、イタリアの工房で培われた高い技術が光るテクニックだと断言できますね。

小暮:10年近く前ですが、「ボッテガ・ヴェネタ」の職人たちが来日され、編み込みしている様子を間近で見たことがあります。隙間なく均一に編み込むには高い技術と手間を要することがわかりました。

森岡:「イントレチャート」がブランドのアイコンになっていますが、“これ見よがし”ではないところもこのバッグの人気の秘密かもしれません。ブランド名がすぐわかるような“ロゴ”などを使わずとも、わかる人にはすぐわかる。“大人”なラグジュアリーバッグと言えます。

小暮:2001年にグッチ(現ケリング)が株を取得し、商品や広告などすべてを監修するクリエイティブ・ディレクターを迎え、職人的な技術にコンテンポラリーなスタイルをもち込みました。18年からはイギリス人のダニエル・リーがクリエイティブ・ディレクターに就任しましたね。

森岡:ダニエル・リーになって。よりクリーンで、スポーティで若々しくなったという印象がありますね。もちとん「ボッテガ・ヴェネタ」が本来もっていた趣味やセンスのよさはそのままですし、このバッグのように「イントレチャート」などの職人的な技術がブランドの根幹にあることは変わりません。

小暮:もう一方のバッグ、これはメッセンジャーバッグでしょうか。肩掛けのデザイン。イエローのカラーリングはこれまでの「ボッテガ・ヴェネタ」とは印象が違いますね。

森岡:これまで「ボッテガ・ヴェネタ」の作品はダークトーンが多かったのですが、ポップなカラーを加えるのが、ある意味ダニエル・リーの手法とも言えます。
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photograph by Masahiro Okamura | text by Masahiro Kogure fashion | direction by Hiroshi Morioka | edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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