この経緯で“面白い動き”が見られたと村田氏は続ける。
「投資をきっかけにファンになってくれた方が結構いたんです。ファンだからファントークンを買った、ではなく、投資家が買ってみて徐々にエンゲージしていくというユーザー体験が生まれた。新鮮な驚きでした」
昨シーズン、中心選手である鈴木優磨選手が欧州で日本人初シーズン最多17得点という記録を樹立した記念に1000STV(ファントークン)バーン(流動性を制限して価値を上げる仕組み)した際、選手のSNSに世界中の投資家から激励のダイレクトメッセージが送られてきたのだという。
「買ってファンになるという流れは、スポーツベッティングとも少し似ていますね」と、選手会の弁護士なども務める山崎氏は言い、こう指摘する。
「これまで縁のなかった人々、ライトユーザーとのエンゲージメントの入り口的な機能を果たしていると言えます。一方、スポーツベッティングにおける八百長もそうですが、試合結果に対する興味関心が異常に高まることによって、選手にとって新たなプレッシャーになるリスクはセンシティブな問題です」
あらゆる観点で“ファンエンゲージメント”の最適化を考える必要があるようだ。
進化版クラウドファンディングとして、“コミュニティ”を形成
鎌倉インテルは、四方健太郎オーナーがJリーグ参入を目指して2018年1月に設立した若いクラブだ。今季は神奈川県社会人サッカーリーグ2部で戦う。
昨年12月にはホームスタジアム建設のための支援金3359万1000円を3カ月間のクラウドファンディングで集め、その「みんなの鳩サブレースタジアム」は10月17日にグランドオープンを迎えた。
(c) みんなの鳩サブレースタジアム
今年7月からは、クラブ強化や人材育成、地域への貢献活動などのため、ブロックチェーンを活用したクラウドファンディング2.0「FiNANCiE」でクラブトークン(ファントークン)を発行。目標額を1500万円とし、スタートから3週間で550万円を集めたが、スタジアムのプロジェクトと比べると想定していたペースは鈍い。トークンに対する理解度がまだ低く、説明を要しているのが現状だと四方氏は話す。
「クラウドファンディングはワンショットの支援ですが、クラブトークンは“コミュニティ”として定期的、継続的な繋がりができ、とてもありがたいと思っています。FiNANCiEアプリ内では売却もできるので、より気軽に購入いただけるかと予想していましたが、まだ従来のクラウドファンディングほどは浸透していないようです」
実際、スポーツビジネス関係者が中心に参加したこのトークイベントでも、ファントークン、NFTの購入経験がある人は3〜4割だった。
鎌倉インテルは成長していく姿を応援してくれるファンと一緒にクラブを作っていく、「みんな」を巻き込みながら運営しているクラブだ。そこにトークンが加わることで、クラブの成長をより自分ごととして感じてもらいたいと考えている。つまり、鎌倉インテルにとってクラブトークンは、ファンと成長のプロセスを共有するための“コミュニティ”形成のツールなのだという。