ビジネス

2021.07.15

成長を生んだ、起業家精神の復活「個と徹底的に向き合った」理由

ライフネット生命保険 取締役副社長 執行役員 西田政之 


──人事評価制度も新しくした。

従来の業績貢献度評価に加え、「成長度評価」を導入。その年に社員が達成したい「成長目標」を設定し、1年間の成長差分を評価項目に加えた。金銭的インセンティブとして業績連動型の賞与も始めた。部長職以上は、原則任期3年とする「役職任期制度」も導入した。ベンチャー企業ならではの昇格のスピード感を維持するのが狙いだ。

──企業の成長につながる人事戦略で大切なことは。

一貫して心がけたのは、社員の会社や業務に対するエンゲージメントを高めること。CHROの役割は、「社員一人ひとりと徹底的に向き合うこと」。個が重視され、会社と社員の関係も「会社が社員を選ぶ」から「会社が社員に選ばれる」傾向が強い時代になった。個の自己実現目標と企業目標のベクトルの方向性を合わせる必要がある。だからこそ、徹底的に「個と向き合う」ことが大切だ。人事の最大の任務は、社員の目標を明確化し、自主性を尊重し、成長を促すなど内的な動機付けではないか。

──これからのCHROの役割は。

重複するが、社員一人ひとりの熱意にいかに応え、成長の機会を用意できるか。そして企業の理念や目標と個人の自己実現のベクトルをどう合わせるか、がとても重要だ。また、世界経済フォーラムでは、25年までに従業員の2人に1人はデジタル分野への「リスキリング」が必要になり、残りの従業員も、スキルの40%は市場の要求に合わせて転換を図らなければならないと予測している。企業は社員にスキルの転換を促していかなければならない。そうした変化の時代だからこそ、CHROが危機感をもち、いかにリーダーシップを発揮するかが、企業のこれからの成長力を左右するだろう。


にしだ・まさゆき◎ライフネット生命保険取締役副社長 執行役員。証券会社、ラッセル・インベストメント、マーサー・ジャパン取締役COOなどを経て、2015年6月より現職。21年6月、現職を任期満了で退任する。

ライフネット生命◎2006年創業。代表者は、代表取締役社長の森亮介。12年3月、東証マザーズ上場。従業員数160名。21年3月期の経常収益予想は前年比18.7%増の200億円、純損失は32億円。時価総額792億円(4月12日時点)

文=池田正史 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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