テクノロジー

2021.08.19 16:30

「廃プラ再生」で地球存続を模索、無限リサイクルは叶うか

世界的なプラスチックによる汚染は悪化の一途をたどっている(Getty Images)

世界的なプラスチックによる汚染は悪化の一途をたどっている(Getty Images)

野生生物のドキュメンタリー制作で知られる動物学者デイヴィッド・アッテンボロー卿が、英国が主導する新たなプラスチック再生技術のキャンペーン動画に登場し、世界の海をさらに強力に守ろうと呼びかけている。
advertisement

ほかにも著名な自然保護活動家が名を連ねるこのキャンペーンは、英国で革新的なリサイクル施設の建設が始まったことをPRするものだ。この技術を開発した企業によると、世界で初めて、あらゆる種類の廃プラスチックが再生可能になるという。この仕組みが普及すれば、全世界で排出される年間3億トンのプラスチックごみの再利用を大幅に増やせて、海に流出するプラスチックの量を削減できる。

「海洋プラスチック汚染は悲惨だ。これほど無駄な苦しみはない」とアッテンボロー卿は動画の中で語る。「プラスチックごみが海に流れ込むことなど、本来あってはならないのだから」

null
世界的なプロデューサーであり動物学者、デイヴィッド・アッテンボロー卿。英国が国を挙げて作成したプラスチック再生技術のキャンペーン動画に登場した(Richard Stonehouse/Getty Images)
advertisement

英国のリサイクル企業ミューラ・テクノロジーが公開しているこの動画には、アッテンボロー卿はじめ、著名な海洋生物学者で活動家でもあるシルヴィア・アール、2016年にネットフリックスでドキュメンタリー映画「プラスチックの海」を製作したジョー・ラクストンが出演している。

どんなプラスチックも何度でもリサイクルできる


ミューラ社は独自のリサイクルシステム「ハイドロPRS」を12年がかりで開発した。これは超臨界蒸気(臨界圧力を超える高圧で加熱された蒸気)によってプラスチックを分解し、原料の石油や化学物質に還元する仕組みだ。そうして戻った原料は、新たなプラスチックや燃料など、さまざまな用途に再利用できる。

CEOのスティーヴ・マーンは言う。「わが社のシステムは、リサイクル不可能とされてきた素材に再利用の道筋をつけるものだ。リサイクルできなければ埋め立てか焼却され、環境汚染の道をたどるしかないが、ハイドロPRSはあらゆる種類のプラスチックを元の構成原料に戻し、新たに再生プラスチック原料として利用することができる」


Getty Images

このシステムでは何度でも繰り返しプラスチックを再利用でき、食品包装などのプラスチックから有機物を分離することも可能だという。分離された有機物は廃棄されることなく、システムの中核を担うボイラーの燃料として再利用される。

新たなリサイクル施設は現在、イングランド北東部のティーズサイドに建設中だ。英国政府の支援のもと、この技術を世界に広める計画も進んでいる。環境・食糧・農村地域省(DEFRA)の国務次官、レベッカ・パウは言う。

「政府は環境汚染の原因となるプラスチック廃棄物を取り締まると同時に、より多くの資源を廃棄ではなく再利用できるよう推進していく必要がある。真に革新的なこれらの技術に投資することで、企業努力をさらに後押ししていきたい。新たな活動が発展し、目に見える結果が出ることを期待している」
次ページ > 2030年にはプラスチック廃棄物が6倍に

翻訳・編集=大谷瑠璃子/S.K.Y.パブリッシング

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事