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毎年パリで開催されるテックカンファレンス「VivaTech」(Chesnot/Getty Images)

革新的な新技術をテーマに、2014年から毎年フランス・パリで開催されているカンファレンス「Viva Technology(VivaTech)」。今年も6月16日から19日まで開催され、欧州のスタートアップが数多く集まった。

そのなかから、日本には未進出だが、これから世界的に注目が高まりそうな先進的サービスを提供するスタートアップを2社紹介したい。

ひとつはIPO(新規上場)を果たしたばかりのデジタル音楽サービスを提供するフランス発の「Believe」、もうひとつはスカイプなどのスタートアップを多く輩出してきたスウェーデンでいま注目されているフィンテックベンチャーの「Klarna(クラーナ)」だ。

それぞれのトップが登場したVivaTec 2021のセッションでの発言から、既存の業界に挑戦するこの2つのスタートアップが目指すものを明らかにしていこう。

音楽はもっと多様になる


Believeは、2005年に設立されたベンチャー企業だ。音楽レーベルであると同時に、アーティスト向けのデジタル音楽配信技術とマーケティングサービスも提供している。

オーガニックな成長に加えて、2015年にデジタル音楽配信の委託などを行うサービスTuneCoreを買収して、成長を加速させ、VivaTech 2021開催の1週間前にIPOを達成。フランスのスタートアップシーンを盛り上げている。

すべてのベンチャーがそうであるように、Believeの始まりも質素なものだった。共同創業者兼CEOのDenis Ladegaillerieは「16年前のちょうどいま頃、私のアパートで創業メンバー3人が集まり、5人のアーティストが契約にサインしてくれた」と当時を振り返る。

デジタル配信がこれからの主流になることは間違いなかったが、Believeがスタートした2005年といえば、まだCDがメインで販売されていた時代。当時、Ladegaillerieのアパートには、これからの音楽について熱く語り合うアーティストたちが夜な夜な集まって来ていたという。「なので、夜の10時になったら、彼らを追い出さなければならなかった」と笑う。

現在、Believeの従業員は1500人、契約アーティストは8万5000人にものぼる。そのなかには、過去3回連続でアルバムがフランスのアルバムチャートで第1位に輝いたラップデュオPNLも名を連ねる。

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Believeの創業者でCEOのDenis Ladegaillerie

Ladegaillerieは、「音楽を消費するにあたり、デジタルが主要となりつつある。アーティストもデジタルを理解するパートナーを必要としている」と言う。

このデジタル化は、単にフォーマットの違いではない。デジタルへの移行により、音楽業界の構造が変わりつつあるということでもある。

Ladegaillerieが例に挙げたのがドイツの音楽市場だ。2020年、ドイツの音楽ストリーミングでは、上位200人のアーティストが25%を占めた。次の5000人が50%を占め、その下の3万5000人のアーティストが残り15%を分け合う構図になっているという。

「ほんのひと握りのアーティストが多くの売り上げを占める時代ではなくなっている」とLadegaillerieは分析する。これは、一部のトップアーティストを重視してきた既存レーベルには、新たな難題になっていると見ている。

このような音楽に対して多様性をもたらしているのは、リスナーに対して好みそうな曲をレコメンドしてくれるアルゴリズムだ。これに、手軽に試聴することができるデジタルの特性が加わる。

文・写真(人物キャプチャ)=末岡洋子

起業家

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