酒蔵「仁井田本家」に学ぶ、100年後を見据えたビジネス


仁井田本家には夢がある。“自給自足の蔵になる”ことだ。

自然栽培で米を育て、蔵に住んでいる自然な菌だけで酒を造る。水は井戸水と湧き水の天然のものだけを使い、蔵も出来る限り自社山の杉、松、栗と言った木材を使う。現在は太陽光で発電した再生可能エネルギーを使っているが、最終的には電力も自分たちで賄おうと計画している。


とことん柔らかな甘みと心地よいキレが、仁井田本家の日本酒の特徴

「我々の仕事というのは、繋いでいくことがすごく大事だと思っています。僕の代で、繋ぐべきでないことをしてはならない。父や祖父、先祖が紡いできてくれてものに、私が何をプラスできるのか、ということを常に考えています。100年後のよい良い世界のために、今、何をすべきなのか。次の代に何を残したいか。そんな想い巡らせて、これからも仁井田本家の伝統的な自然酒造りを絶やさぬよう、研鑽を積んでいきます」

自給自足というのは、一見、時代に逆行するような印象を受ける。ただテクノロジーが進歩し、AI化が進み、秀逸なサービスが出揃ってきている中、“便利さ”の価値は相対的に下がっていく可能性がある。自分たちの生活を自分たちの手で行うという力強さに、人はより幸せを感じるようになるという仮説は、十分に成り立つであろう。

仁井田本家の目指す方向性は、まさに“古くて新しい”未来のビジネスや生活の在り方なのかもしれない。100年を見据えて事を成すということは、いつでも革新の土台にある、人間の普遍的な特性に寄り添い続けることだ。


左が蔵元で杜氏の仁井田穏彦氏、右が女将の仁井田真樹氏

連載:クリエイティブなライフスタイルの「種」
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文・写真=国府田淳

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