ビジネス

2021.07.14

「ソニーらしさ」といわれる企業文化こそ組織の価値創造の鍵

ソニーグループ執行役専務 安部和志

ソニーからソニーグループへ。2021年4月に社名変更、グループ経営体制へ移行した同社の売上高の事業構成(19年度)は、ゲーム&ネットワークサービス24%、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション24%、金融16%、イメージング&センシング・ソリューション13%、映画12%、音楽11%と多様な事業展開をしている。直近の20年度第3四半期決算では、連結純利益見通しが過去最高を更新し、初の1兆円超と発表。

好業績を収める同社では「人」を、社会に「感動」という価値を創出し続けるための重要な経営の主体ととらえている。そして、人事のトップであるソニーグループ執行役専務の安部和志は、社員が活躍する基盤として「存在意義(パーパス)」「企業文化」の存在をあげる。なぜ、事業が多角化するなかでもソニーらしさは失われないのか。

──事業や組織が変化するなか、CHROが果たす役割とは。

企業の使命は社会に対して価値を創出し続けることだ。ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というパーパスにある通り、提供する価値は「感動」。そして、その感動という価値を創出していくために、テクノロジーや財務的な資本とならび、もっとも重要といえるのが「人」だ。CHROの役割は、ただ社員を支援するのではなく、その「人(社員)」が「価値を創造する」ことを支援することだろう。

──「パーパス」や「企業文化」を価値創出の基盤として重要視している。

11万人の多様な社員が価値創造に向けて、同じ価値観と方向性を共有しながら進んでいけるよう、上位概念としてのパーパスを定義した。社員の評価制度にも組みこみ、さらなる浸透に向けた取り組みをしている。

それを支える企業文化の存在も重要だ。創業以来、継承しているのが「社員の自立と挑戦を尊重する」、「型にはまらないものこそ創造性である」という個を重視する企業文化だ。最近、事業が好調な国内の音楽事業でも、「新しいことへの挑戦を社員間でうながす風土・仕組み」からヒットが生まれており、ソニーがもっていた理念や文化が生きている。中期経営計画策定の過程で、吉田(憲一郎会長兼社長CEO)や各事業の責任者たちと「戦略も大事だが、企業理念や文化に勝るものはない」と話をしている。
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文=山本智之 写真= ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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