──安藤さんの話を聞いていると、本当に理にかなったロジックだとつくづく感じるのですが、それでもリーダーとして、なかなかこのやり方を徹底できないのは、どういう理由があると考えますか?
やはり、その人が「何に恐怖を感じているか」だと思います。
本来、リーダーは「業績が上げられない」「目標を達成できない」ことに恐怖を感じるはずなんです。だからこそ、結果に直結する行動をすることが大事、となります。
ところが、実際には「部下から嫌われるんじゃないか」「自分のやり方に反発しているんじゃないか」「信頼を失っちゃうんじゃないか」という恐怖に苛まれてしまうんです。リーダーとして何が大事なのかを見失って、間違った恐怖を感じている状態です。
安藤広大氏
──どうして、それが起こるのでしょうか?
それは「素の自分」に戻っているからじゃないですか。一人の人間として考えれば、「相手に嫌われたくない」「信頼を失ったらどうしよう」と不安になって、恐怖を感じるのは当然の原理ですよね。
だから、「素の自分」というか、一人の人間に戻ってしまったら、さまざまな恐怖が降り掛かってくるのは当たり前です。
──だからこそ、この本のタイトルでもある『リーダーの仮面』ということですか?
まさにそうです。「仮面」という表現はそもそも識学にはなくて、ダイヤモンド社の編集者がつけてくれたタイトルですが、初めて聞いたときは「さすが、うまいこと言うな」と思いました。
識学の言葉で言えば、「機能」です。
上司やリーダーはもちろん、社員というのも機能ですから、その機能を果たすためには、やはり「素の自分」ではなく役割としての「仮面」が必要です。素の自分とは別の役割として、機能しなければならないからです。
だから私は「素顔を変えろ」とか、「人間性や性格を変えろ」と言っているのではありません。それは、もちろんそのままでいいわけです。ただし、組織のなかで機能するためには仮面をかぶることが必要です。
もちろん最初は、私も多少の抵抗はありました。前職では、どちらかと言うと「人気者のリーダー」でやっていましたから。でも、やってみれば、その葛藤はすぐになくなります。
識学のやり方の方がストレスがなく、楽ですし、再現性が高く、圧倒的に成果が出ますから。