ウーバーが買収提案の地図サービス「HERE」の実力

(Photo by Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images)



先日、ウーバーが30億ドルで買収提案を行ったと報道されたのが、フィンランドのノキアが手がける地図サービス「HERE(ヒア)」。自動車メーカーのBMWやAudi、Mercedes-Benzなどもこのサービスの導入に関心を示す中、配車サービス最大手のウーバーが、それに一歩先んじたかたちだ。

多くの自動車メーカーは自動運転車プロジェクトを進めており、彼らにとってHEREの作る高精度の地図は有用だ。現状ではグーグルマップに依存しているウーバーも、独自の地図ソフトを手に入れれば、コアビジネスの旅客運送だけでなく、食べ物の配達やマイカーの相乗り通勤の手配など、新分野での事業運営にも役立つ。

HEREの提供する地図情報は極めて精密で頻繁に更新される。ベルリンに本拠を置く同事業部門は200の拠点で約6000名を雇用。ノキアは世界中の地図を逐次更新するために億単位の経費をかけている。HEREの社名は当初Navteqだったが、2007年にノキアが81億ドルで買収した。

現在、デジタル地図業界で主要な位置を占めるのはグーグルマップで、推定ユーザー数は10億人。GoogleのAndroid端末ではデフォルトの地図となっている。とはいえ、HEREも自動車メーカー向け地図システム販売では優位に立っており、同市場での市場占有率は80%を超える。

ウーバーはグーグルからの出資も受けているが、同社は最近、グーグルへの依存から脱却を図っている。ウーバーは最近、マッピングと自動運転車技術に関する研究をカーネギーメロン大学と共同で行うことも発表した。

自動車メーカーらも、グーグルの動きを警戒している。Wall Street Journal 紙のレポートによると、グーグルはAndroidと同様に、全自動車メーカーが使える自動運転車用OSを売り出そうとしているからだ。

ベンチャー・キャピタルから59億ドルもの資金を調達し、売上も大いに増進中のウーバーにとって、30億ドルの買い物は、決して難しいものではないようだ。同社は3月に地図ソフト会社deCartaも買収している。

自動車メーカーやウーバー以外にも、多数の会社がHEREの獲得に関心を表明している。そこにはFacebookやAmazon、Appleのような大手ハイテク企業らも名を連ねている。

文=アーロン・ティリー(Forbes)/翻訳編集=上田裕資

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