とはいえ、AR(拡張現実)やAIについては関心があると素直に表現した。すでにiOSとiPadOSに直接サポートを組み込んでいるARについては、「人々の生活を幅広い方法で豊かにする技術」だと、またAIについては、「人々の時間を開放してくれる技術」だと述べた。
クックがもう1つ、興奮とともに語ったのが「アップルウォッチ」だ。自身がCEOになってから加わった新しい製品カテゴリでもある。
「発売当初は、ウェルネスの視点で考えていた。だが心拍数を測定するセンサーを搭載したところ、心臓に問題あることがわかったというお礼のメールをもらうようになった。そこで、心電図、不整脈(心房細動)の検出などの機能を加えた。健康とテクノロジーの交差点に楽観している」とクックは語り、今後はヘルスケア面での機能強化が続くことを伺わせた。
対談の終わりに、Brut.のラクロアが「失敗」についてはどう考えているかと、クックにコメントを求めると、「毎日、何かしら失敗しているよ」と即答。しかし、「社内での失敗は許しているが、社外では許されない」と商品展開については厳しさを見せた。
クックによれば、開発したものの結局は出荷しなかった製品も過去に何度もあったし、ある方向性を追求するうちに、過程での発見から大幅な軌道修正を行うこともあったという。
そして最後に「失敗は人生の一部。失敗していないということは、十分に挑戦していないことだ」と会場の起業家たちにエールを送った。
VR/ARはスマホに次ぐプラットフォーム
ハーバード大学在籍時にフェイスブックを共同創業したマーク・ザッカーバーグは、おなじみグレーのTシャツ姿で、米国からオンラインで参加した。対談相手は、Viva Techの主催者でもあるPublicis Groupeの会長、モウリス・レヴィ(Maurice Levy)だ。40分間にわたるやり取りのなかで最も盛り上がったのは、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)についてだった。
フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ。写真は2018年の様子(Getty Images)
フェイスブックがVRヘッドセットのOculus VRを買収したのは2014年。VRとソーシャルネットワークは一見結びつきがないようにも見えたが、ザッカーバーグは「フェイスブックのフォーカスは、人々がコネクトする(つながる)のを支援すること。これを実現するためにはテクノロジーが必要」と述べ、VR/ARは「臨場感をもたらす。別の場所に他の人と一緒にいるような気分になる。これは、これまでのどの技術とも異なる」とその役割を説明した。
その例として、ザッカーバーグはこのコロナ禍の1年で一気に普及したビデオ会議を例に挙げた。
「人間はいつも空間を認知しており、リアルの会議では右にいる人の発言とか、その向こうの壁が何色だったとか、そういったことと合わせて物事を記憶している。しかし、参加者の顔が画面にグリッド表示されるだけのビデオ会議では、何が起こったのか思い出せないことがある」
VRの主要なユースケースはゲームだが、VRの会議アプリは、「現時点ですでに感動的だ」とし、今後重要なユースケースになるとザッカーバーグは予想した。