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2021.08.02 10:30

デザインとエンジニアリング。 ふたつの言語で見つめる宇宙輸送

岡田匡史(JAXA)と田川欣哉(Takram)


燃焼実験の様子
LE-9エンジンの燃焼試験の様子。
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田川:H3ロケットの開発はどの程度まで進んでいるのでしょう?

岡田:今は9合目あたりといえますね。昨年、9合目まで一度登ったんですが、開発中のメインエンジン「LE-9」の燃焼試験で、設計変更したほうがよい技術課題が生じたことで、8合目まで引き返しているんです。苦渋の選択でしたが、打ち上げそのものも、2020年度を21年度に見直させてもらいました。そして今、再び9合目まで登ってきたというところです。もう山頂は見えてるんですが、山頂を前にとてつもない急坂が待ってまして、今からその急坂をロッククライミング状態で登っていく。そんなところです。

田川:急勾配の9合目から山頂までは、どのようなプロセスがあるのでしょう。
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岡田:ロケットの機体(試験機1号機)は、すでに種子島宇宙センター内で組みあがっていますが、 LE-9エンジンは開発の最終段階にあります。このエンジンは、昨年5月に私たちの想像を超えた複雑な現象で課題が生じました。今この課題を克服しつつあるところで、これからあと数か月で仕上げる予定です。

田川:そういったいわゆるトラブルが起きたときに、何を支えとしていますか?

岡田:やっぱり「成功させてやろう」という気持ちですね。その気持ちが背中を押してくれてるんですけど、それでもこれまで経験したことのない新しい試験に臨むときは、緊張を通り越して怖く感じることもあります。想像を超えるような現象が目の前に現れるので。ですが、目をつぶらずにその現象と対峙していると本質である物理が見えてくるんです。すると克服できるというのがわかってくるので、そうした経験の積み重ねによって、ここまでこれたと思います。

田川:そのプレッシャー、僕には想像できないです。

岡田:どんなに高度なシミュレーションをしても100%完璧ということはないんです。多くの技術課題はそれを超えたところで生じるので。課題が生じるとそのまま開発を続けるわけにはいかないので、常にリスクマネジメントに心がけています。第2の設計を用意しておく、交換部品を準備しておくなど。ですが、打ち上げを延期させていただいた残りの時間も限られています。ここが正念場、頑張りどころという状況です。

田川:打ち上げが、本当に迫っていると。

岡田:はい、今年度中に試験機1号機を打ち上げます。
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取材・文=水島七恵 写真=山本康平

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