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2021.08.02 10:30

デザインとエンジニアリング。 ふたつの言語で見つめる宇宙輸送

岡田匡史(JAXA)と田川欣哉(Takram)


岡田:それはまたかなりの方向転換ですね。
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V-RESASのイメージ図
2020年6月、内閣府が新型コロナウイルス感染症の日本経済への影響をビッグデータを用いて可視化する地域経済分析サイト「V-RESAS」を公開。Takramは、 V-RESASのコンセプト・UI/UX・可視化などのディレクションを担当。内閣府・内閣官房「V-RESAS」

田川:僕のような選択をした人は周りに誰もいなくて、大学の友人にも「頭おかしいんじゃないか」とか言われてたんですけど(笑)。帰国後はプロダクトデザイナーの山中俊治さんが主宰するデザイン事務所で働きました。山中さんも工学部出身ながら、すでにデザインとエンジニアリングの両方を同時に担う仕事をされていたんです。そこで5年間修業を積んだ後、2006年に今の会社であるTakramを共同創業しました。

岡田:ということはTakramさんの場合、どんなテーマでも社内であまり分業せずに取り組んでいるのでしょうか?
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田川:そうですね。分業はほとんどしていないです。外形、つまりは美的な部分も、機能や技術面も分業せずに両方できる人間が並列で絡みながら様々なプロジェクトを担当しています。

岡田:やはりそこがポイントですね。

田川:ひとつ言えるのは、Takramは一個人、一社員のアーティスティックなセンスで勝負するようなタイプの会社ではないですね(笑)。まずはエンジニアリングベースで合理的に考えていく。例えば一脚の椅子を作るときにまず考えるべきは、座り心地が良いか、悪いか。快、不快の身体的な認知の話になります。どの角度設定にすれば座りやすいかを構造的に分析する。これは再現性のある世界ですから、サイエンスに近い話でもあります。その認知でいうところの低次レベルが整ってくると、今度は高次レベルの話。美的価値といった話になってきますが、技術面と美的価値のすり合わせは、細かなディテールの世界であり、かなり高度なレベルの話になってくるので、分業せずにひとりの人間がエンジニアリングとデザイン、ふたつの視点を振り子のように揺らしながら突き詰めていくほうが、最短でより良い場所に到達できるんです。

岡田に話をする田川

ロケットの開発現場とは、技術との闘いによって成り立っている


田川:実は僕、種子島宇宙センターで、実際にH-IIAロケットの打ち上げを見ているんです。当時、 20代前半だったんですが、山中さんに同行して、種子島宇宙センターへ行ったんです。打ち上げの光景はもう、人生観が変わりました。なんというか、人間のスケールを超越したものに圧倒される感じで。

岡田:そうでしたか、ロケットは膨大なエネルギーが凝縮した乗り物ですからね。天気にも恵まれたんですね。

種子島の発射場
種子島宇宙センターの大型ロケット発射場

田川:はい。その形容しがたい感覚は、今もはっきり覚えていますし、当時も会う人会う人全員に打ち上げの見学を勧めました(笑)。「絶対、見に行ったほうがいい」と。岡田さんはそんなH-IIAロケットの後継機にあたるH3ロケットの責任者をされているということで、そのプレッシャーたるや、悲喜交々含めて途方もないだろうなあと思います。

岡田:ロケットの開発現場というものは、技術との闘いの積み重ねなんですね。それが宿命のようなものです。緊張の糸が緩むことのない状態ではありますが、その積み重ねの総仕上げが打ち上げです。まさに一発勝負。打ち上げは確実に成功させなければなりませんから。
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取材・文=水島七恵 写真=山本康平

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