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岡田:グラフィックに対するこだわりは、私が特に強いかもしれません(笑)。かつ、様々な意見を聞いてそれらにすべて応えようとすると、千差万別でまとまらないので、意見は聞きつつも、最終的にはこれでいく、と。自分の感覚でまとめてひとつの提案にするしかないんです。

田川
:まさにその点は、民主的には成り立たないですね。デザインとはハイレベルになってくると、コンテクストが重要になってきます。つまりデザインだけの世界観ではなくて、例えばこのロケットがどういうかたちで使われて欲しいとか、使うことのメリット、デメリットは何なのかとか、すごく複雑な世界観の一部としてデザインも機能してくるので、その高度なコンテクストを一番理解している岡田さんが判断するというのは、正しいことだと思います。

岡田:エンジニアリングの領域とはまた別のプレッシャーがかかりました。それでもまあ、楽しいプレッシャーなんですけど(笑)。

田川:たとえエンジニアリングの制約が強くても、こだわれる範囲でデザインの力を通じて全体をチューニングしていく姿勢は、本当に価値があると思います。

岡田:ただ、ここで難しいのはデザインをいくら探求しても、ビジネス的にはリターンがすぐにあるわけではないところですね。なぜならロケットを見て共感してくださった方々にロケットを販売するわけではなく、先ほどのお話の通り、ロケットとはあくまで輸送サービスであり、そのサービスを担うのは、三菱重工さんです。三菱重工さんにH3ロケットの運用をお任せする以上、三菱重工さんが使いやすいロケットに仕上げることが最も重要ですから。

対談の様子

田川:おっしゃること、本当によくわかります。そのバランスは非常に難しいですけど、例えば江戸時代から続いてる老舗のお菓子屋さんに行くと、品が良くて少し、背筋が伸びるような豊かな時間を過ごせたりしますよね。つまりお菓子が美味しいから、価格がお手頃だからということだけで、人は案外、そこのお菓子を買い求めているわけではないような気がしています。そんな風にしてやっぱり世の中に長い間定着しているものというのは、短期的なビジネスリターンとしては望めないであろう部分に対しても、しっかりと設計しているように思うんです。その姿勢が「お菓子屋さんがなくなっては困る」という、情緒的価値に繋がっていくのではないでしょうか。

岡田:人間の感情に対しても気を配ることで、多くの人の心を引き込んでいるということですね。その感情に対しても、デザインとは有効な手立てだと。

田川:ですからJAXAの視点に立ったときに、H3ロケットは日本のシンボルであると見立てながら、グラフィックデザインについても磨きをかけてゆき、子どもたちが見たときに、「かっこいい!!」と憧れるような存在にしていくと。並行してH3ロケットで培われた技術開発なりを大学の教育に活かしていくなどしていけたら、輸送サービスという領域を超えたすごく有機的な価値に繋がっていくように思います。

取材・文=水島七恵 写真=山本康平

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