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音響試験の実験場の中に立つ長友 宏

JAXAの機関紙「JAXA’s」の読者アンケートには、「JAXAで働く人について知りたい」という声が多く集まった。本記事は異業種のバックグランドを持ちながら働く中途採用職員を取材。JAXAに転職したきっかけから、現在の業務のこと、そしてこれからのことを聞いた。

長友 宏
部署:環境試験技術ユニット
〈紹介〉学生時代のオーケストラ活動から音響に興味を抱き、大学院で音響学を専攻する。音響振動を専門とする会社で、技術部門の業務管理に関わったのち、2020年にJAXAへ。


音響の経験を宇宙開発に活かしたい


「『はやぶさ2』から届いた小惑星リュウグウの映像を見て、その鮮明さと臨場感に感動したんです」

宇宙に興味を持ち始めた長友は、宇宙開発について調べるうちに、自分にもチャンスがあると気づく。

「音響振動という、自分が取り組んできた分野がJAXAで役立っていることを知りました。ここでなら経験を活かして宇宙開発に貢献できるのではと思い、中途採用に臨みました」

大学では工学部に在籍し、建築を学んでいた長友。中学から始めたホルンを続けるため、大学ではオーケストラに所属。将来を模索する中で、音の響きの奥深さに目覚めて音響学の道へと進む。卒業後は、さまざまな分野の企業と一緒に、騒音対策や音響に関する計測技術を研究する仕事を担っていた。そんな彼が、JAXAに入って驚いたことがふたつある。

「ひとつは、試験設備の規模です。とにかくスケールが大きく、種類も豊富。前職で国内外の試験設備を経験してわかった気でいたのですが、想像を上回る規模感でした。もうひとつは、組織としての柔軟性です。国の機関なので、ある程度進め方や内容が固定されていそうですが全く違う。挑戦が当たり前に行われ、常に変化している組織だと感じています」

長友の作業の様子
実験開始後は、2—3日は実験棟に籠っての作業に /(写真右)計測データは、このケーブルを通して制御室に送られる。

業務のひとつに試験設備の維持と運用があるが、昨年から民間企業に運営を委託。その結果、長友ら研究職員は、研究開発に集中的に取り組めるように。

「我々の部署では、打ち上げ時や宇宙における環境をどう再現して衛星の試験を行うべきか、試験手法に関する研究を行っています。宇宙の熱や真空状態などさまざまな環境の試験がありますが、私が担当するのが音響と振動です。ロケット打ち上げ時のわずか数分の話ですが、その間の大きな音が打ち上げる衛星にどう伝わるのかを研究し、振動がもたらす影響をシミュレーションしながら対策を考えます。

これまで関わっていた音響分野では、人間が耳で聞いてどう感じるかが大切でした。けれど宇宙に飛び立つ衛星等にとっては、強い音によって引き起こされた振動が機器にどれだけ影響するかが重要になる。このアプローチの違いも面白いですね」

長友にとって、JAXAでの研究はまだ始まったばかりだが、最後に今後の展望を聞いてみた。

「経験を積み、理解を深めることが最優先。そのなかで課題を見つけて取り組み、そこでの技術が宇宙開発に役立ったら嬉しいです。また、衛星などの開発者が環境試験で困ることはたびたびあると思うので、的確なアドバイスをしたり、一緒に試験を乗り越えたりするような役割も担えたらと思います」

JAXA’s N0.84より転載。
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取材・文=野村紀沙枝 写真=大町晃平

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