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2021.07.17 10:00

ピーター・ティールも認めた「自動運転芝刈り機」のポテンシャル

ジャック・モリソン(左)、デイビス・フォスター(中央)、アイザック・ロバーツ(右)(Scythe Robotics提供)

ジャック・モリソン(左)、デイビス・フォスター(中央)、アイザック・ロバーツ(右)(Scythe Robotics提供)

世間では乗用車や物流トラック向けの自動運転テクノロジーが注目を集めているが、このカテゴリーは実用化までの道のりが長く、まだ先が見通せない状況だ。そんな中、コロラド州ボルダーに本拠を置く「シンセロボティクス(Scythe Robotics)」は、インスパイアードキャピタルやトゥルーベンチャーズなどのVCから1860万ドル(約20億円)を調達し、自動運転の芝刈り機を発売するとアナウンスした。

「本当に自動運転テクノロジーの恩恵を受けられるのは、どのような領域だろうと考え続けた結果、ある日、ボルダーの郊外で庭の芝刈りをしているときにアイデアが閃いた」と、語るのは2018年に同社を共同創業したCEOのジャック・モリソンだ。

モリソンは、現COOのアイザック・ロバーツや、ハードウェア主任を務めるデイビス・フォスターらと共に、シンセロボティクスを立ち上げた。

彼らは過去3年間、テキサス州のClean Scapesなどの造園業者と協力して、彼らのニーズに合う自動運転式の芝刈り機の開発を続けてきた。シンセロボティクスは、このマシンを直接、消費者に販売するのではなく、造園業者にレンタルするところから事業をスタートしようとしている。

一般的な造園業者は3000ドル以上する芝刈り機を酷使しているため、毎年かなりのメンテナンス費用が必要で、3〜4年ごとに交換しなければならないという。シンセロボティクスは顧客に芝刈り機を貸し出し、刈り取った芝生の面積に応じて料金を徴収しようとしている。

モリソンによると同社の芝刈り機はすべて、電動で駆動しオペレーションは自動で行えるため、ダウンタイムやメンテナンスの手間が少なくて済むという。

ロチェスター工科大学を中退したフォスターは2019年、ピーター・ティールが大学を中退した若者に授与するティールフェローシップを、シンセロボティクスの一員として獲得した。「芝刈り機で一番壊れやすいのは、エンジンや動力系のパーツだ。ガソリンエンジンをやめて、電動化すればずっと長持ちするマシンを実現できる」と彼は説明する。

彼らの自動運転の芝刈り機は、労働者の確保に苦戦している造園業者にとって朗報だ。トランプ前大統領が、移民労働者向けのH-2Bビザの発給を制限して以来、この業界は働き手不足にあえいでいたが、その状況はパンデミック以降にさらに悪化した。

「芝刈りのタスクを自動化することで、造園業者は賃金を植木の剪定や手入れなどを行う職人の雇用に充てられる」と、シンセロボティクスの調達を主導したインスパイアードキャピタルの担当者のLucy Delandは話す。「ロボットがビジネスの拡大を支援していく動きは興味深い。彼らにとってロボットはチームの一員なのだ」と、Delandは続けた。

編集=上田裕資

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