ロックヘルスはこの分野について、資金調達ラウンドと評価額の上昇に加え、M&Aの活況も続くだろうと予測している。「スタートアップ企業のなかには、すぐれた事業ではあるが単独ではうまくスケールしないと思われるものもあり、これらは経営統合によって規模を拡大できるだろう」とエバンズは言う。2021年のデジタルヘルス関連買収件数は、これまでのところ月平均22件で、2020年の月平均と比べて2倍近い。
デジタルヘルス関連の資金調達は過去1年間で飛躍的に増加したが、まだまだ成長の余地はある、とエバンズは言う。米国における医療費の総額は3兆9000億ドルにのぼり、GDPの約19%を占める。一方、2020年にデジタルヘルス企業が獲得した資金は、すべてのベンチャーキャピタル資金の約9%に過ぎない。つまり、経済に占めるヘルスケアの割合をかなり下回っている。
「資金が投入されすぎているとは思わない」と、エバンズは言う。とはいえ、今の大量の資金投入が効果的かどうかは、時間が経ってみないとわからない。彼は資金流入について、「現在の市場の状況において、企業は競争に勝つために合理的な決断をしている」と述べた。
企業のイグジットの数も急増している。これには、従来のIPOルートに加え、SPAC(特別買収目的会社)が代替手段を提供していることが大きい。2021年はこれまでのところ11のデジタルヘルス企業がイグジットしたが、うち6社はIPO、5社はSPACによる買収だった。さらに、2021年末までに11のSPACによる買収が予定されている。
このような勢いは2021年いっぱい続くと予測されるが、資金調達が過熱し評価額が高騰する時代はいずれ陰りが見えてくるだろうと、エバンズは述べる。「市場は合理化され、ある程度落ち着くだろう」
その時になれば、収益と顧客数の伸びにおいて明暗が分かれ、どのデジタルヘルス企業の評価額が正当なものなのかがわかるだろう。エバンズはさらに、「最初期の段階で過剰に高評価を受けた企業は、次シーズンのデジタルヘルス投資で、厳しい現実を突きつけられる可能性が高い」と述べた。