ヴァージンの宇宙船に搭乗した女性エンジニアが見た景色

(C)Virgin Galactic

7月11日、リチャード・ブランソンの宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックは、自社の創業者を宇宙空間に送り込むという偉業を達成した。ブランソンを含む6人を乗せた宇宙船ユニティ(VSS Unity)は、イヴ(VMS Eve)と名付けられた母船で高度約14キロまで運ばれた後、高度86キロ前後の宇宙空間に上昇した。

今回の飛行で最も注目を集めたのは、このフライトの商業的な側面だ。ヴァージン社は今月始めの声明で、ブランソンは同社の顧客である民間宇宙飛行士のエクスペリエンスを評価するために搭乗すると述べていた。


しかし、今回のミッションの目的は、ヴァージン社の商業宇宙旅行の準備が整っていることを示すことのみではなかった。

宇宙船に乗り込んだ4人のミッションスペシャリストのうちの1人は、科学的リサーチを行うことを主な目的としていた。ヴァージン社で研究業務担当のバイスプレジデントを務めるインド生まれの航空エンジニアのシリシャ・バンドラ(Sirisha Bandla)の目的は、同社のフライトで人間の手による研究ができるかどうかを確認することだった。

バンドラが行った実験は、NASAの支援を受けたフロリダ大学の研究チームの依頼で行われたものだ。飛行当日にニューメキシコ州のスペースポート・アメリカで開催された催しには、共同研究者のロバート・フェル博士とアンナ・リサ・ポール博士らも参加した。

この実験は、宇宙船内の重力に応じて植物の遺伝子発現がどのように変化するかを探るものだった。これは、過去にNASAが他のサブオービタルフライトで支援した研究と類似したものだが、NASAのFlight Opportunitiesプログラムの中では、初めての人間の手による調査となることを目指している(詳細については、@UF_Space_PlantsのSNSアカウントで開示されている)。

バンドラはさらに、2つ目の目的として、宇宙空間でリサーチを行う際の課題や困難を調査すること挙げている。

「私の役割は、実行能力を示してみせることだった。宇宙空間に運んだケネディの固定チューブの3本をすべて作動させることが出来た」と、バンドラは着陸後に話した。彼女はフェル博士とポール博士らに渡すサンプルとデータを無事入手出来た。

研究者も宇宙の景色を楽しむことが重要


今後のフライトに搭乗する研究者たちにとって、何が重要になるかを尋ねると、バンドラは「タイミングだ」と話した。宇宙空間という極めて稀なシチュエーションの中で、「窓からの景色を楽しむことはとても重要だ」と彼女は述べた。

「私は今後のフライトに参加する研究者たちが、宇宙空間のエクスペリエンスを楽しみつつ、やるべき仕事をすべてこなせるようにしたい」と、バンドラは語った。

「私の場合、窓からの景色にうっとりしてしまい、しばらく経ってから我に返り、仕事をしなくてはと思った」と、彼女は笑顔で話した。他のメンバーが興奮に沸き立つ宇宙船内で、研究に集中するのが難しかったことは容易に想像がつく。

バンドラはまた、宇宙の微小重力下では特定の作業が困難になるため、姿勢を安定させるための方法を提案する予定だと述べている。

ヴァージン社は、商業飛行を開始する前の残りのテストフライトのスケジュールや、乗組員については発表していないが、バンドラは今後、自身の経験と洞察を研究者仲間のケリー・ジェラルディと共有することになる。ジェラルディは、今回の試験飛行のライブストリームにも参加しており、将来のヴァージン社のフライトに搭乗する予定だ。

編集=上田裕資

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